家屋改造費について

8月に入ってからも東京周辺の交通事故のご相談を数多く対応させていただいていますが,しばしば,家屋を改造する費用が賠償されるかについてご質問があります。
そこで,今回は家屋改造費についてお話しします。

被害者が交通事故等による後遺障害のために住前暮らしていた住居で生活を継続することが困難となって家屋を改造した場合には,後遺障害の内容・程度等により必要性が認められれば相当額の賠償が認められます。
家屋改造費については,その必要性・費用の相当性に争いが生じることが少なくありませんが,一般的に,重度後遺障害者が自宅内における移動や基本的な生活動作を行うための,たとえば,車いすによる移動のための玄関のスロープの設置,自宅内の段差の解消,トイレ及び浴室の改造等は認められやすいといわれています。
もちろん改造内容は合理的なものでなければなりません。
裁判例としては,RSDによる後遺障害等級9級11号が認定された被害者につき,車いすを利用するために被害者の寝室がある2階トイレ及び洗面所等の新築工事,2階の段差解消工事費等を認めたもの(大阪高判平成18年8月30日)や,右膝関節の機能障害等による後遺障害等級12級が認定された被害者につき,和式トイレを洋式トイレに改造した費用及び玄関から公道までの間の金属製の手すり設置費用を認めたもの(大阪地判平成2年8月6日)などがあります。
その他,右眼失明による後遺障害等級8級が認定された被害者につき,手すり取付工事及び浴室改修費の5割を認めた裁判例(東京地判平成13年2月22日)もあります。
一方で,新築工事費用を請求する場合には,自宅が賃貸物件であること,家屋改造では車いすによる移動では車いすによる移動の空間を確保するのが物理的に不可能であることのほか,建物を改造するよりも新築した方が経済的であるなど,新築工事の必要性・相当性を主張・立証する必要があります。
もっとも,家屋の改造等の必要性・相当性が認められるとしても,他の同居の家族が改造等によって家屋の利便性の向上による利益を享受していると認められる場合等には注意が必要です。
裁判例において,家族の利便は反射的利益にすぎないとして減額が否定されたもの(東京地判平成15年3月26日)もありますが,全額を認めずに全体の工事費から一定割合が減額されたものや,工事箇所ごとにそのような事情が認められるか否かを検討し,認められる部分と否定される部分を区別して認定されたものもあります。
たとえば,新築工事を行った事案について,改造費用160万円のほかに新居購入費用の1割である648万円を認めた裁判例(東京地判平成15年2月27日)があります。
家屋改造費についてお困りの方は,お気軽に弁護士法人心東京駅法律事務所にご相談ください。
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