ブラウン・セカール症候群について

 交通事故に伴う後遺障害のご相談を多く対応していると、脊髄損傷についてご相談があることも少なくありません。
 脊髄損傷が自賠責保険における後遺障害として認定されるためには、脊髄損傷が分かるМRIなどの画像所見が必要であるため、画像所見が明らかでない事案は、残念ですが、自賠責保険による後遺障害認定を受けることは難しいです。
 脊髄損傷は、身体の中心である脊髄が損傷する傷病であるため、病態としては基本的に両側とも症状が生じることが一般的です。
 その中で、特殊な病態として、ブラウン・セカール症候群(ブラウン・セカールという名称は、この病態を発表した方の名前です)があります。
 ブラウン・セカール症候群は、片側は運動麻痺のみ生じ、反対側は感覚障害のみ生じるなど、異なる症状が片側ずつ生じるような病態です。
 このブラウン・セカール症候群と間違えやすいのは、脊髄損傷の診断を受けたものの片側だけ症状が出て、反対側は全く無症状である病態です。
 これは、ブラウン・セカール症候群とは言えず、脊髄損傷の病態として説明が難しいものとして、基本的には、自賠責保険における後遺障害が認定されないものになります。
 医師や後遺障害の認定機関である損害保険料率算出機構から誤解を受けないためにも、強く出る症状ばかり医師に伝えるのではなく、反対側にも感覚障害などが生じているのであればそのこともしっかりと伝えることが大切です。
 その他、脊髄損傷案件で気を付けなければならないのは、画像所見上明らかでないものの、問診等から脊髄損傷の診断を受けている事案です。
 この場合、患者側からすると、医師が脊髄損傷と診断しており、ご自身が症状が継続していることを認識していることから、後遺障害認定を受けられるものと安易に考えてしまっている可能性があります。
 先ほどもお話ししたとおり、脊髄損傷として自賠責保険における後遺障害認定を受けるためには、脊髄損傷であることが画像所見上明らかである必要がありますので、残念ですが、脊髄損傷の症状としては非該当になってしまいます。
 もっとも、この場合に、頚椎捻挫などの首の筋肉等の負傷が分かる傷病名があり、かつ、頚部痛等の症状がある場合には、頚椎捻挫による頚部痛等の症状が後遺障害の対象となる可能性があります。
 そのため、頚椎捻挫等の診断がされており、かつ、頚部痛等の症状が残っている場合には、後遺障害診断書にその旨を記載していただくことが大切です。
 このように、ついつい頸椎捻挫より頚髄損傷の方がイメージとして重く感じてしまうことから、頚髄損傷が後遺障害診断書に記載されていれば安心してしまう方がいらっしゃいますが、念のため、残った症状等をしっかり記載していただくことも大切です。
 交通事故による脊髄損傷でお悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。