任意保険会社から調査会社に事故状況などの調査を依頼すると言われた場合

1 調査会社が事故状況などの調査を行う理由
 調査会社が事故状況などの調査を行う理由は様々ありますが、その中でも多いのは、①事故と負傷との因果関係に疑義があるケース、②過失割合に争いのあるケース、③事故と負傷箇所との整合(因果関係)に疑義があるケース、④治療内容などに疑義があるケース、があります。
2 事故と負傷との因果関係に疑義があるケースについて
 任意保険会社が損害保険料率算出機構(調査事務所)に対して、今回の事故で負傷することが認められるかを確認する事前認定のために調査されている場合があります。
 ミラー同士の接触事故、クリープ現象による追突事故、駐車場内の逆突事故、物損が軽微である事故などが因果関係を否定されやすい傾向にあります。
 特に気をつけなければならないのは、こちら側の物損が軽微であるケースであっても相手方車両の損傷が相当程度生じている場合、相手方車両の損傷の程度が分かる資料が損害保険料率算出機構に提出されていないことがあることです。
 この場合には、相手方車両の損傷の程度が分かる資料を提出してもらうことが大切です。
3 事故と負傷箇所との整合(因果関係)に疑義があるケース
 たとえば、追突事故で、車両の損傷がそれほど大きく無いにもかかわらず、首や腰だけでなく、右足や右手首などを痛めた場合に、保険会社が、今回の事故で右足や右手首を痛めることについて疑いを持つことがあります。
 この場合には、右足や右手首の受傷機転(怪我をした原因)をしっかりと伝えることが大切です(たとえば、右足でブレーキを踏んでいたところ追突され、足に負荷がかかり負傷した場合にはそのことを伝えることや右手でハンドルを握っていて追突され右手首をひねった場合にはそのことを伝えることなどが考えられます)。
4 不安になったら弁護士に相談を
 交通事故に関して調査会社から調査の話が出るなど、今後について不安になられましたら、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故で頭部を負傷した場合の注意点

日々、交通事故のご相談を対応していると、自転車に乗っているときに衝突され頭を路面に打ち付けた方やバイクで走行中に跳ねられ頭を路面に打ち付けた方など頭部を負傷している方が一定数いらっしゃいます。 
そこで、今回は、交通事故で頭部を負傷した場合の注意点についてお話しします。

交通事故で頭部を負傷した場合には、できる限り早期に精密検査(CTやMRIなど)を受けることが大切です。
精密検査を受けて異常がなければ安心ですし、異常があるのであれば今後の治療方針に大きな影響を与えるため、いずれにしても精密検査を受けることが大切です。
医師は患者からの情報をもとに精密検査を受けるべきか否かを判断しますので、事故状況を説明して頭部を負傷していることを理解していただくことも大切です。

また、事故直後に検査を受け、異常は無かったたものの、事故後から事故前には無かった行動や言動がある場合には、継続的に脳神経外科を受診することが安全です。
びまん性軸索損傷など事故から時間が経過した後に脳損傷が画像上発見されるようなものもありますので、症状があるうちは継続的に受診し、適切なタイミングで精密検査を受けることが大切です。

頭部を負傷した場合に、高次脳機能障害になってしまう方もいらっしゃいますが、高次脳機能障害の症状として、たとえば、事故前には頭の回転がとても早かった方が平均程度になってしまった場合や事故前は優しい性格であった方がすぐ怒り出す性格になってしまった場合など、事故前の本人の状況を知らない医師では把握しにくい症状もあります。
主治医に症状を把握していただくためにも、ご家族の方が事故前と事故後の変化を適切な形で医師や看護師に伝えることが大切です。

高次脳機能障害の症状が治らなかった場合に、後遺障害等級認定申請を考える方もいらっしゃいます。
医師が作成する神経系統の障害に関する医学的意見書やご家族が作成する日常生活状況報告書の記載内容が適切なものでないと適切な後遺障害等級が認定されないことがあります。
頭部を負傷した場合には、様々な注意点がありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみることも選択肢の一つです。

池袋母子死亡事故について

 日々、交通事故に関する報道が多くありますが、その中でも、池袋母子死亡事故に関する報道がありましたので、お話ししたいと思います。

 池袋母子死亡事故(池袋で2019年4月に発生した母子2人が死亡した交通事故)の損害賠償請求について、10月27日に約1億4600万円の賠償を命じる判決が言い渡されました。
 約4年前に報道で事故を知り、なんとも言えない気持ちになったことを、昨日のことのように思い出します。
 妻と子を、突然、失ってしまうということ、最後のお別れもできず失ってしまうこと、これからの未来が突然奪われてしまったこと、とても想像ができないことですが、それが起こってしまったご遺族の方は想像を絶する辛さだったと思います。

 私も、交通事故を集中的に取り扱う弁護士として、死亡事故に携わることも多くありますが、ご遺族の方の気持ちを考えるといつも遺族の方にかけられる言葉が乏しく、自分にできることは何があるんだろうかと自問自答しながら、精一杯、弁護士として活動しています。
 死亡事故はもちろん、事故によって高次脳機能障害になられてしまい生活が一変してしまった方、手足が不自由になり生活が一変してしまった方、様々な方からご依頼をいただきますが、その度に、自分にできることは何があるんだろうかと自問自答してしまいます。
 弁護士の活動は、適切な賠償金を得ることはもちろんですが、何か被害者やご遺族の方の支えになれることは無いのかと考え、行動することも大切だと思っています。

 約4年前に、死亡事故の現場に向かい、花束を添えさせていただきました。
 その想いは、もちろん、亡くなられた方への想いもありますが、それだけでなく、ご遺族の方が、少しでも前を向いて生きてほしいという願いも込めてです。
 今回の判決で、1つの区切りを迎えたかもしれませんが、ご遺族の方にとっては忘れられない事故であることに違いはありません。
 交通事故に携わる弁護士として、ご遺族の方が、亡くなられた方の分も、精一杯、前向きに生きていくことを切に願っています。

むちうち症になった方の事故後の注意点

交通事故によりむちうち症になった方のご相談も数多くありますが、その中で、初めてご相談いただいたときには手遅れになっていることもあります。
そこで、今回は、交通事故によりむちうち症になった方の事故後の注意点についてお話しします。

1 早期の受診が大切
 事故によりお怪我された場合には、できる限り早期に病院を受診した方が、症状が軽く受け取られる可能性を低くでき、かつ、事故とお怪我との因果関係についても争われにくくなります。
 そのため、早期の受診が大切です。
2 事故から2週間(14日)以内が特に注意
 事故から2週間以上経過してから医師に伝えた症状について、自賠責保険では、事故との因果関係が認められないことがあります。
 そのため、事故から2週間(14日)以内に新たな症状が生じた場合や以前医師には伝えていなかった症状がある場合には、医師に伝えてカルテ(診療録)に記載してもらうことが大切です。
3 症状を伝えるときの注意点
 むちうちの症状の中には、一日中痛みが続けており、天候の悪い時により症状が悪化する方がいらっしゃいます。
 この場合に、受診時に伝える症状として、「雨の日に痛い」ということを強調するあまり、カルテ(診療録)に「雨の日に痛みが生じる」などと記載され、結果として、裁判所や保険会社などから雨の日のみ痛みが生じる(いわゆる天候時痛)との認定をされてしまうことがあります。
 天候時痛の認定がされてしまうと、早期の治療費の打ち切りや後遺障害等級認定申請においても不利な扱いをされてしまうことがあるため、症状の伝え方には注意が必要です。
4 定期的な通院を
 むちうちの場合には、骨折とは異なり、症状を裏付ける客観的証拠が乏しいため、定期的に通院することが大切です。
 定期的に通院していない場合には、症状が軽く受け取られる可能性があることや症状が治ったものと認定されることがあります。
5 万が一治らなかったときに備えて
 完治することが一番ですが、万が一治らなかったときに備えて、通院段階から、後遺障害等級認定申請に不利な状況にならないようにしておくことも大切です。
 適切な通院頻度の維持、症状の伝え方など様々ありますが、いずれにしても交通事故に詳しい弁護士からアドバイスを受けることが大切です。

助手席に座っていて交通事故に巻き込まれた場合の注意点について

日々、交通事故のご相談を多く対応していると、助手席に座っていた方が交通事故に巻き込まれたケースについてのご相談がポツポツあります。
そこで、今回は、助手席に座っていて交通事故に巻き込まれた場合の注意点についてお話します。

1 運転手の不注意で生じた自損事故の場合
この場合には、運転手は助手席の方に対して損害賠償を支払う義務を負います。
運転手と助手席の方がご家族の場合で、人身傷害保険(ご自身側の保険でご自身などの治療費等を支払う保険)に加入している場合、人身傷害保険を使用して治療を受けることが多いです。
一方で、運転手が人身傷害保険などを含む任意保険に加入していない場合は、治療費を立て替え払いして、後々、運転手から支払いを受けるか、または、自賠責保険会社に請求することが考えられます。
自賠責保険会社に請求する場合には、①自賠責保険の契約者が誰か、②車両の所有者は誰か、③日頃、助手席の方が運転することはあるのか、などを確認すると良いです。
①自賠責保険の契約者が助手席の方で、②車両の所有者も助手席の方であれば、自賠責保険を使用できない可能性が高い一方で、①自賠責保険の契約者が運転手で、②車両の所有者も運転手で、③日頃、助手席の方は運転をしておらず、今回も運転をする予定は無かった、となれば、自賠責保険に請求できる可能性が高いです。

2 別の車両の運転手の不注意と乗っている車両の運転手の不注意により生じた事故の場合
 この場合には、別の車両の運転手(Aとします)と乗っている車両の運転手(Bとします)の双方が、助手席の方に損害賠償を支払う義務を負います(いわゆる共同不法行為)。
 通常は、過失が大きい方の保険会社が治療費の支払い等を対応しますが、過失が大きい方が任意保険に入っていない場合などは異なる対応になります。
 共同不法行為の場合には、Aの車両の自賠責保険とBの車両の自賠責保険の両方に対して治療費等を請求できることがありますが、この場合も、Bの自賠責保険に請求できるかは前記1と同じ注意点があります。
 前記1の注意点が問題無ければ、2つの自賠責保険に治療費等を請求できる可能性が高いため、その場合には、自賠責保険の枠は合計で240万円(治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料など傷害分の合計)が上限になります。
 保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合であっても、自賠責保険に対して請求することで回収できることがあるため、注意が必要です。

事故後に生じた症状に関する注意点

交通事故のご相談を多く取り扱っていると、事故直後には生じていなかった症状が後から出てきたことに関するご相談がよくあります。
そこで、今回は、事故後に生じた症状に関する注意点についてお話しします。

事故から一定期間経過した後に生じた症状については、事故との因果関係の存否が問題になります。
自賠責保険では、事故から2週間以上経過した症状については、基本的には事故との因果関係を認めません。
たとえば、事故当初は首の痛みのみ生じていましたが、2週間経過した後に腰の痛みが生じた場合には、基本的には、腰の痛みとの因果関係は否定されます。
この2週間以内という基準は、基本的には、医療証拠との関係で把握されるため、たとえば、事故日に受診して、首の痛みのみ伝えて、その後、事故から3日後に腰の痛みが生じていたにもかかわらず、受診しないまま、事故から2週間経過した場合には、基本的には、腰の痛みとの因果関係が否定されます。
また、仮に2週間以内に受診した場合であっても、カルテなどの医療証拠に記載されていない場合には、因果関係が否定されることになります。
症状が新しく出現した場合には、できる限り早期に受診して、カルテなどに記載してもらうことが大切です。

医師に対する症状の伝え方としては、毎回症状をしっかりと伝えることが大切です。
後遺障害申請では、症状の一貫性、継続性が問題になることがありますが、その際に、カルテの記載において、症状が漏れている受診日があると、それを理由に、症状の一貫性、継続性が否定され、後遺障害として認定されないことがあります。
また、後遺障害申請までは至らないケースであっても、治療をしていく中で、症状を伝え忘れたために、治ったと認定されてしまうこともあります。
毎回症状をしっかり伝えることが大切です。

事故後に生じた症状については、できる限り早期の受診と適切な対応が必要になりますので、お悩みの方は、お早めに交通事故に詳しい弁護士に相談することをオススメします。

自賠責保険の補償範囲

交通事故案件のご相談を多く対応していますが、その中で、自賠責保険の補償範囲について問い合わせがあることが多いため、今回は自賠責保険の補償範囲についてお話します。

そもそも、自賠責保険は公道で自動車を運転する上で法律上義務付けられている、いわゆる強制保険です。
傷害分(治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料など)の上限は120万円、後遺障害分はその等級に応じて上限額が定まり、死亡分は3000万円が上限です。

自賠責保険では物的損害に関する補償はされません。
たとえば、相手方が任意保険に加入していない場合で、車両が損傷し、お怪我もされていた場合に、お怪我に関しては、自賠責保険で一定の支払いを受けることができますが、車両に関しての損害は、自賠責保険では支払われないことになります。
そのため、車両に関しては、相手方の任意保険があれば、任意保険会社に請求することになりますが、任意保険に加入していない場合には、相手方本人から支払いを受けることになります。
相手方本人が資力が無い場合には、事実上、回収が困難になることもあるため、要注意です。

自賠責保険の上限額は、あくまで上限に過ぎず、その中で細かい支払基準があります。
たとえば、傷害分に関しては、自賠責基準の慰謝料は、実治療日数✕2✕4300円、または、治療期間✕4300円、のうちいずれか低い金額になります。
過失割合当方0対相手方10、治療期間90日、実治療日数30日のむちうち症の方であれば、実治療日数30✕2✕4300円=25万8000<治療期間90日✕4300円=38万7000円であるため、自賠責基準の慰謝料は25万8000円になります。
なお、治療期間90日のむちうち症の弁護士基準の慰謝料は、53万円が目安になりますので、上記事例では自賠責保険では支払いきれない部分が20万円以上生じていることになります。
いずれにしても、交通事故の慰謝料でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

歩行者と自転車の事故の注意点

 交通事故の相談をご対応していると、歩行者と自転車の事故に関する相談があります。
 そこで、今回は、歩行者が被害者になった場合の歩行者と自転車の事故の注意点についてお話しします。

1 警察を呼ぶ
 歩行者と自転車の事故だと、自動車事故とは異なるため、警察を呼ぶという発想が乏しい方も少なくありません。
 しかし、警察を呼ばないと、事故の発生や事故の状況についての証拠が薄くなる可能性があります。
 そのため、まずは警察を呼ぶことが大切です。
2 自転車側が適用できる保険があるかを確認する
 まずは、自転車保険に入っているかを確認します。
 自転車保険を使用できれば、治療費や慰謝料などについて、最終的には、保険会社が支払うことになるため、スムーズに支払いを受けやすくなります。
 また、自転車に保険を付けていない場合であっても、自転車の運転手ご自身やそのご家族が自動車保険などに加入しており、その自動車保険などで日常生活で他人を怪我させた場合に補償できるものに入っていれば、その保険が使用できる可能性があります。
 そのため、まずは、自転車に保険を付けているか確認し、無い場合には、自動車保険などで使用できるものがないか確認する手順がオススメです。
3 歩行者側の保険を確認する
自転車側が保険に入っていない場合には、ご自身側の保険を使った方がスムーズなことがありますので、ご自身の加入している自動車保険などで、歩行中で相手方が自転車の場合でも適用できる内容かを確認しておくことがオススメです。
4 自転車側が保険に入っている場合には、賠償金の提案金額に注意
 自転車側が保険に入っている場合には、保険会社が賠償金を計算して、提案してくることが多いです。
 この場合に、提案された賠償金が相場より低額であることがありますので、示談前には交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

 このように、歩行者が被害者になった場合の歩行者と自転車の事故については様々な注意点があります。
 自転車事故でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

追突事故の過失割合に関する注意点

交通事故に関するご相談の中で、追突事故の過失割合について相談される方がいらっしゃるので、今回は、追突事故の過失割合に関する注意点についてお話しします。

追突事故の場合には、基本的には、追突した車両の運転者の一方的な過失にされることが多いです(過失割合は、追突された車両の運転者が0対追突した車両の運転者が100)。
もっとも、追突された車両が急ブレーキをかけたため追突された場合には、基本的過失割合が、追突された車両30対追突した車両70になります(別冊判例タイムズ38【154図】)。
なお、危険を防止するためにやむを得ない場合に急ブレーキをかけたときには、前記の基本的過失割合にならないことは要注意です。

その他、追突のように見えても、実際は、車線変更直後に追突された事例には注意が必要です。
この場合には、車線変更事案として扱われることが多く、四輪車同士の基本的過失割合が、車線変更した車両(追突された車両)の運転者70対直進していた車両(追突した車両)の運転者30になります(判例タイムズ38【153図】)。
車線変更事案として扱われるか追突事案として扱われるかは、当事者の具体的な位置関係などによって異なります。

このように、追突事案のようであっても、急ブレーキの有無、急ブレーキをかけた理由、車線変更事案として取り扱われるか否か、などによって、基本的過失割合が大きく異なってきます。
事故状況に争いが生じた場合には、証拠の有無によって事実が認定されるが決まってしまうため、証拠が大切になります。
ドライブレコーダーはもちろんですが、周囲の防犯カメラの映像、警察が作成する実況見分調書や目撃者の供述なども重要です。
実況見分調書は人身事故扱いでないと作成されないものになるため、過失割合に関して争いを残さないためには、人身事故扱いに切り替えた方が良いです。
過失割合でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるのも一つだと思います。

信号のない十字路の交差点における自転車対自動車の事故の過失割合について

交通事故案件のご相談を多く承っていると、信号のない十字路の交差点における直進同士の自転車対自動車の過失割合についてのご相談が多くあります。
そこで、今回は、その場合の過失割合についてお話ししたいと思います。

まず、自動車に一時停止規制がある場合の基本的過失割合は、自転車10対自動車90です(別冊判例タイムズ38・243図)。
次に、双方の道路に規制がない同幅員の場合の基本的過失割合は、自転車20対自動車80です(別冊判例タイムズ38・240図)。
さらに、自転車に一時停止規制がある場合の基本的過失割合は、自転車40対自動車60です(別冊判例タイムズ38・244図)。
そして、自動車の方が優先道路(自動車側のセンターラインが交差点の中でも引かれている道路)の場合の基本的過失割合は50対50です(別冊判例タイムズ38・246図)。

裁判所は、事故状況から基本的過失割合を導き、そのうえで修正要素がある場合には、基本的過失割合を修正して、過失割合を判断することが一般的です。
たとえば、自動車の運転手が酒気帯び運転であった場合には、修正要素である「著しい過失」にあたり、10%修正されることが一般的です。
そのため、前記のとおり、双方の道路に規制がない同幅員の場合の基本的過失割合は、自転車20対自動車80ですが、自動車側が酒気帯び運転の場合には、その他の修正要素がない限り、10%修正し、自転車10対自動車90となる可能性が高いです。

なお、修正要素が存在することを証明する責任は、基本的には、修正要素によって有利になる方が負います。
修正要素を証明するうえでは、ドライブレコーダー映像などがあると良いです。
ドライブレコーダーの映像は、SDカードなどの記録媒体に保存される形式が多いですが、事故後、すぐに記録媒体を抜き取っておかないと、場合によっては上書きされてしまい、事故状況の映像が消えてしまうことがあるため、要注意です。

このように、過失割合の判断は、基本的過失割合を知るだけではなく、修正要素の有無も大切になりますので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合について

交通事故の相談の中で、信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合についてご相談いただくことも多いです。
そこで、今回は、信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合についてお話ししたいと思います。

交通事故の過失割合については、裁判例の集積が多くされており、別冊判例タイムズ38に過失割合についてのその考え方が記載されています。
たとえば、センターラインのある優先道路(交差点内にもセンターラインが入っている道路)を直進していた自動車Aと脇道から出てきた直進自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA10対B90です(105図)。
また、一時停止規制のない道路を直進していた自動車Aと一時停止規制のある道路を直進していた自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA20対B80です(104図)。
その他、優先道路や一時停止規制もなく、道路の幅員も同程度の十字路の交差点の場合の基本的過失割合は、左方車A40対右方車B60になります(101図)。

過失割合を認定するためには上記基本的過失割合から修正要素があるかを吟味し、なければ基本的過失割合で過失割合を認定することになります。
たとえば、一時停止規制のない道路を直進していた自動車Aと一時停止規制のある道路を直進していた自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA20対B80ですが、Bが一時停止をしたうえで左右の安全確認を行いAの接近を認めたものの、その速度と距離の判断を誤って交差点に進入した場合には、修正要素にあたるため、その他の修正要素がない限り、過失割合はA40対B60になります。
修正要素は事故状況によって異なりますが、その内、著しい過失や重過失などが修正要素となっていることも多く、何が修正要素にあたるかは事案によって様々です。

過失割合については、基本的過失割合を知るだけでなく、修正要素が何かを知ることも大切ですので、お悩みの方は一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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交通事故での治療を継続していたときに、再度、事故に遭ったらどうすべきか

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今回は、よく質問のある、交通事故での治療を継続していたときに、再度、事故に遭ったらどうすべきかについてお話ししたいと思います。

まずは、すぐに整形外科で受診し、症状を伝えた方が良いです。
以前の事故で通院している整形外科で受診することが多いとは思いますが、症状を漏れなく伝えることはもちろんですが、前の事故で負傷した箇所の症状が悪化している場合にはその旨をしっかり伝えた方が良いです。

前の事故と同じ箇所を負傷して症状が悪化している場合には、異時共同不法行為として後の事故の保険会社が一括対応を行うことが多いです。
もっとも、前の事故と後の事故で負傷箇所が異なる場合には、異なる負傷箇所のみ前の事故の保険会社が一括対応を行うこともあります。
いずれにしても、整形外科などの医療機関、それぞれの事故の保険会社の担当者と適切に情報共有を図りながら対応していくことが大切です。

万が一症状が治らなかった場合に、後遺障害申請を考えられる方がいらっしゃいますが、2つの事故が影響して症状が残ったことが明らかな方が後遺障害認定でも有利になりやすいです。
症状が残ってしまった際に後悔しないためにも、事故により悪化している場合には、しっかりと主治医に伝えることが大切です。

異時共同不法行為の事案で後遺障害申請を行う場合には、後遺障害診断書に2つの事故により症状が残ったことを記載することが大切です。
1つの事故のことのみ記載されている場合には、基本的には、もう一方の事故の影響が無いものとして、後遺障害等級認定申請の審査が進んでしまいます。

なお、異時共同不法行為の場合には、基本的には二つの自賠責保険が使えるため、傷害分であれば120万円×2=240万円まで自賠責保険から治療費等の支払いを受けられる可能性があります。

いずれにしても、2つ事故が重なるケースは注意すべき点が多くありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

後遺障害等級認定申請と異議申立

交通事故により受傷した方で、治療を継続したにもかかわらず症状が残存してしまった場合には、後遺障害の認定を受けることを考えられる方も多いです。
そこで、今回は、後遺障害等級認定申請と異議申立についてお話ししたいと思います。

1 後遺障害等級認定申請
後遺障害等級認定申請は、自賠責保険会社に対して必要書類を提出し、後遺障害の審査を求めるものです。
後遺障害等級認定申請には、任意保険会社経由で申請する事前認定の方法と被害者またはその代理人(弁護士等)が直接申請する被害者請求の方法があります。
どちらも必要書類を提出することに変わりはありませんが、必要書類以外も添付すべきか、そうでないか、により結果が変わることもあります。
たとえば、むちうち症の方で、診療録(カルテ)の記載では、一部に「雨の日首が痛い」と書かれたカルテがあった場合に、この一部のカルテだけを抜粋して提出すれば、実際には常時痛であったとしても常時痛ではないと誤解されて、後遺障害が認定されないことがあります。
この場合には、カルテを全体的に見て、常時痛であることが明らかであればすべてのカルテを提出した方が良いですし、そもそもの誤解を与えないためにカルテを提出しない方が良いこともあります。
このように、必要書類以外で提出した方が良いものと提出しない方が良いものとがありますので、いずれにしても後遺障害等級認定申請前には後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
2 異議申立
後遺障害等級認定申請を行ったものの、その結果に不服がある場合には、異議申立を行うことができます。
後遺障害等級認定申請の結果に至った理由を確認したうえで、必要があれば新しい証拠を添付して異議申立を行うことが有効であることもあります。
たとえば、右手首のTFCC損傷で後遺障害等級認定申請を行ったものの、明らかな外傷性の異常所見を認めないとの理由で、後遺障害が認められなかった場合には、主治医に相談したうえで、外傷性の異常所見が分かる画像を出力して指摘してもらい、異議申立を行うことが有効であることもあります。

適切な等級を認定されるためには、後遺障害等級認定申請に関する豊富な知識が必要であることも多いため、後遺障害でお悩みの方は、一人で悩まず、後遺障害に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

証明責任(立証責任)について

交通事故のご相談の中で「相手方が争ってきて、証拠がない場合にはどうなるのですか?」という質問が多くあります。
裁判では証明責任(立証責任)によって判断されることになります。
そこで、今回は、証明責任(立証責任)について、お話ししたいと思います。

証明責任(立証責任)とは、主要事実が真偽不明である場合に、その事実を要件とする自己に有利な法律効果が認められない一方当事者の不利益負担のことです。
基本的には、権利を主張する側が証明責任を負います。
たとえば、金銭の貸し借りの事案であれば、貸した側が貸したことを証明する必要があります。
この場合、証拠との関係では、貸す際には、借用書に一筆もらうなど、証拠を作成する機会があります。
そのため、金銭を貸した事実について、争われ、貸したことについて真偽不明となった場合に、貸した側の請求が認められないことは公平だといえます。
しかしながら、交通事故などの不法行為事案では、事後に証拠が作成されることになるため、どうしても証拠が薄くなる傾向があります。
そのため、しっかりとした証拠が残っていない場合に、真偽不明になることが多くあるため、証拠を残すことがより大切になります。
たとえば、治療経過の証拠として、病院のカルテ(診療録)がありますが、カルテの内容で症状が一貫していることが読み取れない場合には、実際には、症状が一貫している場合であっても、賠償金を減額されてしまうことがあります。
そのため、診察の際の言動には注意が必要で、毎回、医師に症状をしっかりと伝えることが大切です。
また、他覚的所見のない打撲、捻挫などは、骨折事案と比べて、客観的証拠が薄くなる傾向があるため、症状を立証するうえで通院の事実がより重要になりますので、適切な頻度で通院することが大切です。
特に、他覚的所見のない打撲、捻挫の症状の後遺障害等級認定申請においては、後遺障害認定の可否に通院頻度が大きく影響します。
そのため、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。

自動車保険の見直しについて

交通事故案件を取り扱うことが多いですが、その中で、ご自身に合っていない自動車保険の内容になっているケースを目にします(保険料の兼ね合いもあるとは思います)。
交通事故に遭ってから、ご自身の保険の内容を初めて理解する方もいらっしゃいますが、できれば、交通事故に遭う前に保険の見直しなどを行い、ご自身に合った保険に加入できた方が良いと思います。
そこで、今回は、自動車保険の内容についてお話ししたいと思います。

1 対人賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者を傷つけてしまった場合に、そのお怪我に関する損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

2 対物賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者の車両などの物を壊してしまった場合に、その損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

3 人身傷害保険
事故によりご自身が負傷した場合に、ご自身のお怪我に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
人身傷害保険を使用しても、等級には影響しないことが多いため、入っておくことをお勧めします。

4 車両保険
事故によりご自身の車両が壊れた場合に、車両に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
車両が高額な場合には、加入した方が良いですが、車両がそれほど高額でない場合には、車両保険をつけることにより保険料がどのくらい変わるかを確認した上で、加入するか決めることをお勧めします。

5 弁護士費用特約
相手方に自動車事故に関する賠償請求するために弁護士に相談する費用や依頼する費用を補償する保険です。
300万円が上限額となっている保険会社が多いです。
弁護士費用特約は、使える人の範囲が広く、本人、配偶者、同居の親族、未婚の子、対象自動車に同乗していた方、などが使えるとしている保険会社が多いです。
一家に一つ弁護士費用特約があれば十分といえます(保険会社によっては範囲が異なるため注意が必要です)。
弁護士費用特約は、付けることによる保険料の増額はそれほど大きくない一方で、使える人の範囲が広いので、付けることをお勧めします。

上記のほか自動車保険の種類は様々ですので、保険代理店に相談して保険の見直しを行うことをお勧めします。
また、実際、事故に遭われてしまった場合には、ご自身の加入する保険を使用した方が得になることもありますので、交通事故でお悩みの方は弁護士に相談してみるのも一つです。

物的損害の流れについて

交通事故のご相談を受けていると、「被害事故で車が壊れたのですが、今後、どのような流れになりますか?」といったご質問がしばしばございます。
そこで、今回は、物的損害に関する解決までのおおまかな流れをお話ししたいと思います。

まず、全損(修理が不可能、または、修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が高い場合)か、分損(修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が低い場合)か、によって流れが異なってきます。

一見して全損の場合には修理工場に入庫せずに、相手方保険会社と時価額の交渉になることが多いです。
また、一見して全損か分からない場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、そのうえで、修理費と車両の時価額を比較して車両の時価額が低いことが分かれば、全損ということになります。
全損の場合には、時価額+買替諸費用のうち一部の項目について、賠償金を受け取り、解決することが多いです。
もちろん、修理するかは被害者の自由ですので、賠償金を修理費の一部に充てて、修理することもできます。
もっとも、修理費と時価額等の差額が自己負担となってしまうため、修理される方は少ないかもしれません。
なお、全損の場合の時価額について交渉するときに気を付けるべきポイントや買替諸費用のうちどのような項目が賠償金として認められるかは、以前の私のブログでお話ししておりますので、そちらを参考にしていただけますと幸いです。

分損の場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、修理され、修理費が修理工場に支払われて解決することが多いです。
もちろん、修理をせずに、修理費相当額を受け取って解決することも可能です。

以前の私のブログで、代車代について、注意すべきことをお話ししておりますので、そちらも参考にしていただけますと幸いです。

このように、物的損害については、全損か、分損かによって流れが異なってきますので、物的損害でお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

後遺障害等級認定申請の認定機関について

今回は、後遺障害等級認定申請の認定機関についてお話しします。
治療を継続したものの症状が残ってしまった場合には、後遺障害認定のために、後遺障害等級認定申請を行う被害者もいらっしゃいます。
この後遺障害等級認定申請の認定機関は、形式的には、相手方の自賠責保険会社になりますが、実質的には、損害保険料率算出機構になります。
後遺障害等級認定は必要書類を自賠責保険会社に提出しますが、自賠責保険会社は、その必要書類を損害保険料率算出機構に送付し、実際に、調査や審査を行うのは損害保険料率算出機構になります。
損害保険料率算出機構の調査が完了した後、損害保険料率算出機構から自賠責保険会社に調査結果が送付され、その調査結果に基づいて、自賠責保険会社で後遺障害等級認定申請の回答が出されるという流れになります。

後遺障害の認定基準について、細かい基準や実際の運用は外部に非公開の情報になります。
また、担当者や後遺障害の申請時期などによっても若干の差が出るとも言われています。
そのため、後遺障害は申請してみないと、認定されるかは分からないものになります。
一方で、後遺障害診断書や経過の診断書、カルテなどに明らかに不利な記載がある場合には、後遺障害が認定されない可能性が高いと分かるケースもあります。
いずれにしても、後遺障害でお悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

後遺障害等級認定申請は、任意保険会社経由で申請する方法(事前認定)と被害者またはその代理人が、直接、自賠責保険会社に申請する方法(被害者請求)があります。
事前認定の場合には、提出した方が有利な書類が添付されていなかったり、提出することで不利になる書類が添付されて申請されることがあります。
そのため、基本的には、後遺障害等級認定申請は被害者請求で行うことをお勧めします。

後遺障害については、気を付けるべきことが多くありますので、お悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

自損事故で負傷した場合の対応方法

今回は、自損事故で負傷した場合の対応方法についてお話しします。
自損事故で負傷した場合には、自己負担で治療費の支払いをせざるを得ないと考える方が多いです。
しかしながら、人身傷害補償保険や自損事故対応の保険を使用して、治療費が支払われることがあります。
その際、自動車に乗ってる時の自損事故であれば、その自動車に付帯されている保険を確認することはもちろんですが、ご家族の方が加入している自動車保険が使えるケースもありますので、ご家族の保険まで確認することをお勧めします。
なお、人身傷害補償保険が使える場合には、治療費だけでなく慰謝料なども支払われることが一般的ですので、確認することをお勧めします。

また、自動車保険等が使えない場合であっても、通勤中や業務中の事故の場合には、労災保険が使える場合があります。
労災保険が使用できる場合には、治療費や休業補償の一部が支払われることがあります。
たとえば、労災保険が使える自損事故により休業した場合には、労災の休業補償として平均賃金の60%を給付日額として支払われることがあります。
さらに、上記休業補償とは別枠で、平均賃金の20%を給付日額として休業日に応じて休業特別支給金が支払われることがあります。

労災保険の休業補償給付と合わせて特別支給金の申請をした方が、全体で、日額の80%を補償されることになりますので、是非、ご活用ください。

人身傷害保険を使用して休業補償として10割受け取り、かつ、労災の特別支給金で20%受け取ることも可能ですので、特別支給金の申請は忘れずに行っておきたいところです。
なお、労災保険からは慰謝料は支払われません。

自動車保険も使用できず、労災保険も使用できない場合には健康保険を使用して通院する形になりますが、上記のとおり、自損事故の場合であっても、自動車保険が使えることがあり、労災保険が使えることもありますので、自損事故を起こした場合には、ご自身の保険はもとよりご家族の保険、労災保険が使えるかなどを確認することをお勧めします。

裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?

法律相談を行っていると、よく、「裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?」との質問を受けることがあります。
もちろん、裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼することは可能です。

弁護士に依頼すると裁判になるというイメージが強いかもしれませんが、実際、弁護士の業務は幅広く、裁判だけでなく、示談交渉、契約書のリーガルチェックなど様々です。
そのため、弁護士に依頼するときに、受任範囲(委任範囲)を示談交渉に絞って依頼すれば、安心です。

私が多く扱っている交通事故分野においては、実は、示談交渉で解決するケースがほとんどです。
保険会社も被害者の方も早期に解決したいという意向が同じであることが多く、示談で解決することが多いのが実態です。
もちろん、保険会社が適切な賠償金を提示しないために、裁判になるケースもありますが、あくまで依頼者の方が望んだ場合に、訴訟(裁判)を提起する形になります。

交通事故案件で弁護士に依頼すると、法的なアドバイスを受けられることはもちろんですが、交渉を任せることができるため心理的負担の軽減につながることが多く、治療に専念しやすくなることがあります。
そのようなメリットに魅力を感じる一方で、「弁護士に依頼すると裁判になってしまうのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、依頼するかはともかく、一度、詳しい弁護士に相談してみるのが良いと思います。
特に、交通事故分野では、弁護士が入っていないケースの場合、低額な賠償金が提示され、そのまま示談してしまうことも少なくありません。
保険会社は交通事故の対応経験が豊富である一方で、被害者の方は、事故の経験が少なく、場合によっては初めて事故に遭われた方も多いらっしゃいます。
そのような中で、ご自身の判断で示談してしまい、後で、適切な賠償金よりも低額であったことを知った時に後悔してしまう方もいらっしゃいます。
依頼するかは相談後に決めれば良いことなので、後悔しないためにも、詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

減収がない場合の後遺障害逸失利益の算定について

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が認定された場合に、後遺障害がなかったのであれば得られたであろう収入等の利益をいいます。
減収がない場合には、基本的には後遺障害逸失利益が認められないため、この点についてお話ししたいと思います。

後遺障害逸失利益の計算方法は、一時金賠償の場合、一般的には、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数、により算出します。
たとえば、令和2年4月1日以降の事故、事故前年度の年収が700万円のサラリーマンの男性で、後遺障害等級第8級が認定された場合、症状固定時の年齢が42歳であれば、一般的には、700万円×45%(後遺障害等級第8級相当の労働能力喪失率)×17.4131(67歳までの労働能力喪失期間25年に対応するライプニッツ係数)=5485万1265円となります(事案の内容や証拠の内容によっても異なります)。

もっとも、後遺障害が認定された事例で、減収が無い場合には注意が必要です。
最高裁判所の判決(最判昭和56年12月22日)で、減収がない事案において、「特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はない」と判断しており、この「特段の事情」について、「たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべき」としています。
このように、裁判所の判断では、減収がない場合には、基本的には、後遺障害逸失利益が認定されないことになります。

後遺障害逸失利益に関しては、様々な裁判例がありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。