前回のブログでは被害者請求の根拠と関連する自賠法の構造についてお話しました。
今回は、その応用編である、共同運行供用者に自賠法3条の他人性が認められるか、についてお話したいと思います(今回も難解な内容となっておりますが、何卒ご容赦ください)。
共同運行供用者とは、2人以上の者が運行供用者に認定される場合を言います。
たとえば、車両の所有者AがBに車両を貸し、Bが運行していた場合において、歩行者Cを負傷させてしまった場合には、基本的に、Aは所有者として運行供用者に当たりますし、Bは運転している本人ですので、運行供用者に当たることになります。
では、上記事案において、Cを運転者、Bを同乗者とした場合に、同乗者BはAとの関係で自賠法3条の他人性は認められるのでしょうか。
この問題につき、いわゆる代々木トルコ風呂事件(最判昭和50年11月4日)において、運行支配が「直接的・顕在的・具体的」であるか、それとも、「間接的・潜在的・抽象的」であるかに着目したうえで、AよりもBの方が、運行支配が「直接的・顕在的・具体的」であるため、Aとの関係ではBの他人性を否定しました。
代々木トルコ風呂事件では共同運行供用者の他人性について、運行支配が「直接的・顕在的・具体的」であるか、それとも、「間接的・潜在的・抽象的」であるかに着目していますが、このメルクマールでは、たとえば、車両の所有者AがBに運転を任せた場合において、Bの過失によりガードレールに衝突したときに、Bとの関係でAは他人性が認められそうに思えます。
しかしながら、上記類似の事案である青砥事件(最判昭和57年11月26日)において、①被害運行供用者の運行支配の程度が、加害運行供用者の運行支配の程度と同等の場合には、被害運行供用者は「他人」として保護されない、②所有者は事故の防止につき中心的な責任を負っており、事故車に同乗している以上、事故時に車を運転していなくても運行支配の程度は「運行支配に服さず同人の指示を守らなかった等特段の事情」がない限り、「他人」にはあたらないと判断されました。
上記のような判例の流れの中で、所有者Aが飲酒したため、運転代行事業者Bに依頼して、Bが運転、Aが同乗していたところ、Bの過失によりAが負傷した事案において、青砥事件で言及した「特段の事情」にあたると判断され、Aの他人性が認められた事例(最判平成9年10月31日)があります。
私が担当した事例でも、代行運転事業者の過失により負傷した事案で、ご自身が所有する車両の自賠責保険に請求して認められたものがあります。
このように、自賠法3条の他人性については難解な問題がありますので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。