後遺障害は医師が認定するのですか?

交通事故のご相談で、「後遺障害は医師が認定するのですか?」というご質問を承ることがあります。
そこで、今回は、後遺障害を認定する機関についてお話しします。

後遺障害を認定する機関は、損害保険料率算出機構と裁判所になります。
医師が作成した後遺障害診断書などをもとに、損害保険料率算出機構や裁判所が後遺障害を認定するため、医師や病院は、後遺障害を認定する機関ではありません。
そのため、医師が後遺障害診断書を作成しても、損害保険料率算出機構や裁判所が後遺障害を認定しないこともあります。

損害保険料率算出機構は、書面審査が中心で(一部、傷跡の後遺障害認定などでは面接調査が行われることがあります)、提出された画像や診断書などをもとに、損害保険料率算出機構の顧問医の意見なども踏まえて、後遺障害の認定の可否やその程度を判断します。
そのため、書面の記載内容がとても重要になり、誤解を与えるような症状の記載によって不利になることもあります。

損害保険料率算出機構は、大きく分けると3層構造で、調査事務所、各地区の本部、東京にある本部、があります。
基本的には、調査事務所が後遺障害等級認定申請の審査を行いますが、難解な案件や異議申立案件などになると各地区の本部や東京にある本部が審査を行うことがあります。
私が担当した案件の中には、むち打ち(頸椎捻挫)で首の痛みが残ってしまった方で後遺障害等級認定申請を行いましたが、調査事務所の判断では後遺障害が認定されず、異議申立を行い、後遺障害が認定されたこともありました。
同じ損害保険料率算出機構であっても、調査事務所の判断と各地区の本部の判断で結果が変わることもありますので、諦める前に、後遺障害に詳しい弁護士に相談することが大切です。

訴訟(裁判)になった場合、裁判所は、損害保険料率算出機構における後遺障害等級認定申請の結果と同じ認定をすることが多いですが、場合によっては、損害保険料率算出機構の後遺障害等級認定申請の結果と異なる等級が認定されることもあります。
損害保険料率算出機構で後遺障害は認定されなかったものの、訴訟(裁判)では後遺障害が認定されるケースや損害保険料率算出機構で認定された等級よりも裁判所が認定した等級が低くなるケースもあります。
損害保険料率算出機構の認定結果に不服がある場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。

打ち切りを告げられたときの確認事項と注意事項

交通事故に遭われた被害者の方で、痛みが残っているにもかかわらず、相手方の任意保険会社から治療費の支払いを打ち切ることを告げられることがあります。
そこで、今回は、治療費の支払いの打ち切りを告げられたときの確認事項と注意事項についてお話ししたいと思います。

1 理由を確認
 まずは、打ち切られる理由を確認することが大切です。
 たとえば、症状固定が理由である場合、徐々に症状が緩和してきているのであれば、その旨を伝えて交渉することが考えられます。
 また、医師が治療継続の必要性を認めており、まだ症状固定ではないと判断している場合には、その旨も伝えて交渉することが考えられます。
2 事故の大きさを再度確認
 事故が軽微であるために治療費の支払いを打ち切られることがあります。
 もっとも、事故の大きさ(車の損傷具合などの物損も参考)を確認すると軽微事故とはいえないケースもありますので、事故の大きさを確認したうえで、交渉することが大切です。
3 医師の見解の確認
 治療費に関しては、基本的に、症状固定までの治療費のみ賠償の範囲に入ります。
 症状固定時期については、主治医の判断が尊重されますので、主治医の意見でまだ症状固定ではないとの判断であれば、その旨も伝えて交渉することが大切です。
4 交渉の際の注意事項
 一括対応による治療費の支払いは保険会社が独自の判断で打ちきることができることに注意が必要です。
 交渉しても保険会社が固くなに打ち切り時期を変えないことも多いです。
 無理に交渉し過ぎるとかえって一括対応の期間を短くされることなど不利になることもあります。
 一括対応による治療費の支払いが打ち切られた場合であっても、自賠責保険の枠が余っていれば被害者請求(被害者またはその代理人が相手方の自賠責保険に対して治療費等を請求する制度)を行うことも考えられます。
 また、症状固定までの必要かつ相当な治療費は賠償金として認定されるため、治療費を支払ったうえで、相手方任意保険会社または相手方に請求することも考えられます。
 いずれにしても治療費の支払いの打ち切りでお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

多摩大学での講演について

先日、多摩大学で講演を行わせていただきました。
自分が学生時代のときに悩んだこと、弁護士を目指した契機、学生の皆さんに伝えたいことなど様々お話しさせていただきました。
私が弁護士を目指すきっかけになったのは、学生時代に悩んでいたことがあり、辛い日々を過ごす中で人を助けられる仕事に就きたいと思ったことにあります。
学生時代に悩んでいた当時は辛かったですが、今となっては、その辛い日々がないと弁護士を目指すことはなく、やりがいのある仕事に就けなかったかもしれない、と思うと、今では辛かった日々があって良かったと思っています。
大変なことや辛いことがあっても、自分を成長させてくれる出来事になることがあり、何が良くて、何が悪いのか分からないと実感します。
人生は足し算で、悩んでいる日々も、いつか力になる時が来るかもしれない、ということや、熱中して取り組んでいたことが仕事でも役に立つことがあること、勉強でもそうかもしれませんが仕事でも積み重ねていくことが大切であること、などをお話しさせていただきました。
少しでも学生の皆さんに伝われば嬉しいです。

久しぶりに学生と話をして、私が学生の頃と状況が大きく変わっていることを実感しました。
新型コロナウイルスが流行し、様々なことが制約されていたり、気を付けなければならないことが増えたり、など。
悩むことや壁が多い時代だからこそ、乗り越えて力にしていけると前向きに考えられたら今後もたくましく生きていけるのではないかとも思います。
裁判の関係では、新型コロナウイルスの影響により、法廷に行かずにウェブ会議で裁判を進めることが増えましたが、新型コロナウイルスが裁判のデジタル化が進む契機になっていることを考えると、改めて困難が力になることもあるのだと実感します。
企業でもリモートワークが進み、通勤時間が不要になるなど業務効率化が図られた部分もあります。
学生の皆さんには、新型コロナウイルスの影響に負けずに、前向きに強くたくましく生きて欲しいと心から願っています。

契約書のリーガルチェックについて

弁護士業務のなかで、契約書のチェックをお願いされることがあります。
その際、弁護士の目線から、いくつか大切にしているポイントがあるので、お話ししたいと思います。

まずは、今回の契約の目的(契約によって達成したい物事)を確認しています。
契約書のリーガルチェックでよくあることですが、「相手方から契約書が送られてきたので、リーガルチェックをお願いします」といった内容でお願いされることがありますが、契約の目的によっては、作成するべき契約書の種類が誤っている、もしくは、不適切なことがあります。
たとえば、売買契約書を確認してほしいといった依頼があったとして、その売買契約の目的を聞いてみると、実は、賃貸借契約の方が適していたり、その他の契約が適していることなどがあります。
このように、契約の目的によっては、そもそも、契約書のリーガルチェックまで至らないこともあります。
そのため、まずは、契約の目的を確認するようにしています。

次に、取引内容や事業内容を確認しています。
そもそも、相談者の方と相手方がどのような話し合いを行っていて、どのような内容や条件で契約をしようとしているのかが曖昧なことがあり、この場合には、リーガルチェックまで至らないこともあります。
この場合には、契約の目的から考えて、必要な事項を確認し、場合によっては、再度の話し合いで条件をつめてもらい、その上で作成された契約書をチェックすることもあります。

契約の目的と取引内容が確定している場合には、契約の法的性質を検討します。
売買契約、賃貸借契約、委任契約など様々な契約の種類がありますが、その内どれに当てはまるのか、どの契約に近いのか、などを考えて、法的に重要な事項を確認します。
契約の法的性質を誤ると結論が異なることがあるため、注意して検討します。

最後に、時系列に即してケースを想定して、問題を洗い出します。
大きく分けると、契約前、契約時、契約後から契約終了まで、契約終了後、の順で問題点がないか洗い出していきます。
この段階で、問題がある場合には、相談者の方に伝えた上で相談しすることが多いです。
契約書が相手方作成のものであれば、契約書の修正が容易ではないこともあります。
そのため、契約書の修正を行うか、もしくは、リスクはあるがこのままにするか、もしくは、リスクを減らせる方法がある場合にはその方法をとるかなどを相談して決めていくことが多いです。

このように、契約書のリーガルチェックも、単に、書面上のチェックをすれば足りるものではないことが多いです。
契約書のリーガルチェックは、契約書の作成やチェックに精通した弁護士に相談や依頼することをお勧めします。

示談金額無料チェックサービスについて

交通事故案件を多く対応させていただいておりますが、この中で、示談金に関するご相談も多くあります。
そこで、今回は、弁護士法人心で行っている示談金額無料チェックサービスについてお話ししたいと思います。
示談金額無料チェックサービスは、交通事故の被害者の方が保険会社から示談金(賠償金)の提示があった場合に、弁護士が無料で示談金額が適正であるかを無料でチェックするサービスになります。
保険会社は、相場より低い金額で示談金を提示することも多くあります。
たとえば、慰謝料の金額が弁護士基準ではなく、自賠責基準や任意保険基準で提案されていることや、主婦の休業損害賠償について日額が約1万円ではなく6100円で提案されている場合には、相場より低い金額である可能性がありますので、要注意です。
また、後遺障害が認定された場合に、たとえば、14級の自賠責保険金である75万円を後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額としている事案は、相場より低い金額である可能性が高いため、要注意です。
その他、実際生じている交通費が計上されていない事例や、実際に生じている休業損害が計上されていないこともあります。
私の経験でも、休業損害が計上されていない事案や相場の半分以下の金額で提示されていた事案もありました。
こういった事案のご相談があると、弁護士としても、相談していただいて良かったと思うことがあります。
もちろん、その中には、実際にご依頼いただいて解決した事案も多くあります。

示談書の取り交わし後では、基本的には、示談金額を争うことができなくなるので、示談前に相談することが大切です。
本当に提示されている金額が妥当なのだろうか?と考える一方で、弁護士に相談するとお金がかかってしまうのでは?と考えて、相談をためらう方もいらっしゃると思います。
示談金額無料チェックサービスでは、無料で示談金額のチェックを行っており、相談料は無料ですので、安心です。
示談金額でお悩みの方は、お気軽に弁護士法人心にご相談ください。

物的損害に関する注意点

今回は交通事故案件における物的損害に関する注意点についてお話しします。

まずは、代車料についてですが、交通事故により車両が損傷した場合に、修理ないし買い替えするための期間、代車を借りることがあると思います。
この代車料については、事案の内容によっても異なってきますが、全損(修理費と車両の時価を比べて修理費が高い場合や修理ができない場合)であれば、30日程度、分損(修理費と車両の時価を比べて車両の時価額が高い場合)であれば2週間程度とされることが裁判例でも多いです。
全損の事案では、手元に購入資金がない方も多く、物的損害に関して示談してから、その示談金を元手にして新車を購入する方もいらっしゃいます。
もっとも、事故後から代車を借りていると、新車の納車日まで保険会社が対応する代車期間が過ぎてしまうことがあります。
そのため、できる限り早めに新車の購入手続きを進めていくことが大切です。
被害者の場合には、まずは、相手方の保険会社との交渉で、できる限り代車を対応してもらうことはもちろんですが、場合によっては、ご自身が加入している代車特約を使用することなども検討する必要があります。

また、分損事案で、過失割合が争点になる事案では、修理を進めたものの、過失割合に争いがあるため、示談できないことから、修理費を立替払いする必要が生じることがあります。
過失割合が生じる場合に、修理費の立替払を行う資金があるか、車両保険に加入している方は車両保険を使った場合の保険料の上がり幅がどの程度か、などを事前に調べておくと良いと思います。

その他、全損の事案で、買替諸費用の一部(同年式、同車種の中古車を買い替えた場合の費用の一部)が賠償金として認められることがあります。
そのため、新車を購入した注文書や同年式、同車種の中古車の買い替えの見積書の写しなどを保険会社に提出することにより、買替諸費用の一部が支払われることがあります。
保険会社によっては買替諸費用を計上せずに示談金を提案してくることがありますので、注意が必要です。

このように、物的損害については注意点がいくつもありますので、物的損害にお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみるのも一つだと思います。

弁護士の選び方について

日々の業務の中で、交通事故と企業法務を取り扱うことが多いのですが、依頼者や相談者の方から、「弁護士を選ぶときに気を付けるべきことはありますか?」と質問されることがあります。
一般の方からすると、弁護士は馴染みが少なく、知り合いにいることも多くないため、悩まれる方も多いと実感しています。
そこで、今回は、弁護士を選ぶときの注意点についてお話しします。

1 相談する分野の知識や経験が豊富な弁護士に相談、依頼すべき
弁護士にも、知識や経験に偏りがあることが多いです。
交通事故を多く扱う弁護士もいれば、相続を多く扱う弁護士もいれば、債務整理を多く扱う弁護士もいれば、企業法務を多く扱う弁護士もいます。
ご自身の相談、依頼する分野の知識や経験が豊富な弁護士に相談、依頼する方が良い結果につながりやすいと思いますので、相談を担当する弁護士がご自身と類似した事案をどの程度経験したことがあるかを確認することをお勧めします。
2 話しやすさ
弁護士は法律の専門家ではありますが、実際の案件を適切に解決するためには、事実をご存知の依頼者や関係者から事実をお伺いする必要が生じます。
事実が異なれば結論が変わることは多々あるため、事実の確認はとても大切です。
一方で、弁護士が話しにくい雰囲気の場合には、依頼する側からして、事実を伝えづらくなり、場合によっては、大切な事実が伝わらない結果、結論が変わってしまうこともあります。
話しやすい弁護士に相談、依頼することをお勧めします。

このほかにも弁護士の選び方として気を付けるべきことは様々ありますが、分野によって確認すべきことが異なることがあります。

たとえば、交通事故であれば、交通事故案件の対応件数はもとより、自賠責保険の後遺障害等級認定申請についての対応件数、異議申し立ての対応件数などを確認すると分かりやすいかもしれません。

法律問題でお困りの方はお気軽に弁護士法人心東京法律事務所にご相談ください。

異時共同不法行為について

交通事故に遭ってお怪我をされた方が、治療中に、再度、交通事故に遭い、お怪我をされ、前の事故で負傷した箇所が悪化した場合、異時共同不法行為として特殊な対応が必要な場合があります。
そこで、今回は、異時共同不法行為についてお話しします。

異時共同不法行為については、共同不法行為(民法第719条1項後段)として処理する考え方と共同不法行為ではなく、別々の事故としてそれぞれを処理する考え方があります。
共同不法行為として処理する考え方の場合には、1つ目の事故の加害者と2つ目の事故の加害者が、原則として、連帯して被害者に生じた損害の全額を支払う義務があります。
被害者にとって有利な考え方といえます。
一方、別々の事故で処理する考え方の場合には、それぞれの事故の損害等を個別に証明しなければならず、被害者にとって、それほど有利な考え方とはいえません。
裁判例も共同不法行為として判断した事案(東京地判平成21年2月5日)と共同不法行為ではないと判断した事案(名古屋地判平成26年6月27日)があります。

事案の内容等によっても判断が異なると考えられるため、共同不法行為として処理されない場合に備えて準備しておくことが大切です。

具体的には、2つ目の事故の賠償との関係で、1つ目の事故の影響を考慮して、賠償金を計算される可能性があるため、2つ目の事故の治療継続中には、1つ目の事故の示談は行わず、2つ目の事故の賠償金の交渉を進めてから、1つ目の事故の示談を進めた方が無難です。
また、自賠責保険との関係で、1つ目の事故について、示談が成立していると、仮に、症状が残存した場合であっても、1つ目の事故の影響は考慮されない可能性があります。
そのため、1つ目の事故の示談は、より慎重に進める必要があります。
このように、異時共同不法行為は、気を付けるべき点がありますので、異時共同不法行為でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

母校の座談会

先日、母校である多摩大学目黒高校の座談会に参加させていただきました。
講壇で、学生時代に意識していたこと、工夫していたこと、後悔したこと、など、様々な質問に回答しました。
個別の質問では、学生時代の勉強や頑張っていたことで今の弁護士の仕事に活きていること、進路に悩んでいるがどうしたら良いか、などの質問にも回答しました。

学生時代を振り返ると、上手くいったこともあれば、上手くいかなかったことも多くあったと思います。
上手くいかなかったことが、今に活きていることもあり、何が学生にとって良いことなのか悩みながら回答した座談会でした。
その中でも、母校の生徒に伝えたかったのは、学生もいつかは社会人として独り立ちすることになるということです。
当たり前かもしれませんが、自分の人生は自分で決めていくことを意識してほしいと伝えました。
今やりたいことが決まっていなくても、将来やりたいことが決まったときに後悔しない学生生活を送ってほしいという思いと、今やりたいことが決まっていないのであれば、
新たな物事に触れたり、今取り組んでいることを一生懸命継続していくことで、自分の好きなものや自分が一生をかけてやりたい仕事が見つかる可能性があることを伝えました。

私は中学生のときに弁護士になりたいと思い、ずっと弁護士になるために勉強をしていましたが、その当時に想像していた弁護士と実際の弁護士の仕事は違う点が多いと感じます。
その当時想像していたよりも大変でプレッシャーも大きいですが、その反面、依頼者の方の笑顔、安心した表情を見れること、喜んだ声、安心した声を聞けることに、これほど喜びを感じられる仕事だと思いませんでした。
母校の生徒の中には、私と同じような経験をしていくことがあるかもしれませんが、どのような仕事するにしても、「この仕事をしていて良かった」と思える人生を送ってほしいなと願うばかりです。
座談会を通じて、私が在学していた当時よりずっと学生のレベルが上がっていて驚きましたが、一方で、進路に悩む生徒が比較的多い印象を抱きました。
少しでも私の回答が悩んでいる母校の生徒のためになれば良いなと思います。

対物超過特約

交通事故で車両が被害に遭った場合に、相手方の加入する任意保険があれば、対物賠償保険によって支払われることが多いです。

もっとも、相手方の任意保険に、対物賠償保険だけでなく、対物超過特約が付帯されていれば、対物賠償保険を超える部分が、対物超過特約で定める範囲で、支払われることがあります。

そこで、今回は対物超過特約についてお話しします。

 

現在の裁判例は、車両に関する物的損害の賠償について、修理費または車両の時価額のうちいずれか低い金額を賠償すれば足りるとする傾向があります。

たとえば、被害者に過失のない追突の事故で、車両の修理費が50万円、時価額が30万円であれば、時価額30万円を賠償すれば足りることになります(厳密には買替諸費用、代車料、レッカー代なども上乗せされる可能性がありますが、ここでは分かりやすくするためにこのように記載しています)。

そうすると、修理した場合には差額の20万円(修理費50万円-時価額30万円)が自己負担という結果になります。

もっとも、相手方の任意保険に、対物超過特約が付帯されていれば、対物超過特約で定める範囲(たとえば、時価額から50万円の範囲など)で、時価額を超える金額が支払われることがあります。

たとえば、50万円を上限とする対物超過特約を付帯していた場合には、先程の事例の場合、対物保険から時価額30万円が支払われ、修理費との差額の20万円が対物超過特約によって支払われることがあります。

なお、過失割合が生じる事故の場合には、相手方に請求できる過失割合分に限定されるのでご注意ください。

このように、対物超過特約によって、対物賠償では支払われない部分が支払われることがありますので、相手方の保険に対物超過特約が付帯されているか確認することはとても大切です。

物的損害については、様々な知識が必要になることも多いため、物的損害でお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。

今年の振り返り

今年は、新型コロナウィルスの感染拡大があり、私達弁護士法人心の業務に関しても大きな支障が出るのではないかと心配した1年でした。
私達が業務をできないことは多くのお客様にご迷惑をお掛けすることにつながってしまうため、できる限りのリモートワークと事務所での仕事の際は、除菌、手洗い、うがい、換気などを徹底して行い、無事、新型コロナに感染する職員も出ずに乗り切れました。
お客様に迷惑をかけず、職員の安全を守れたことは本当に良かったと思う反面、来年も新型コロナウィルス対策を継続する必要があると思います。
今後も油断せず、新型コロナウィルス対策をしつつ、リーガルサービスを提供していきたいと思います。

大変な1年であったにもかかわらず、今年も、多くのご相談、ご依頼、ご紹介、をいただき、誠にありがとうございました。
今年は、例年よりも多くのご相談、ご依頼がありました。
ご依頼者様のアンケートでは嬉しいお言葉をたくさんいただき、私としても、お一人お一人を大切に思っている気持ちが伝わった1年だと実感し、とても充実した1年でした。
ご紹介者様からも、嬉しいお言葉をいただき、大変な中でもご紹介いただいていることに、感謝の気持ちでいっぱいです。
改めて1年を振り返ると、交通事故・企業法務両者ともに様々な案件がありましたが、どの案件も様々な背景があり、ご依頼者様毎にそれぞれのつらさがあり、その思いとともに、歩んできた1年だったと思います。
お客様との関わり方について仕事だと割り切る弁護士も多い中で、私としては、割り切ることは難しく、とにかく「一緒に悩んで考える」ことを大切にした結果、お客様にもその気持ちが伝わったのではないかと思います。
今後も、より良いリーガルサービスを目指して日々精進していきたいと思います。

改めまして、今年も大変お世話になりました。
また、たくさんのご相談、ご依頼、ご紹介をいただき、誠にありがとうございました。
来年も何卒よろしくお願いいたします。

時効についての民法改正の影響

令和2年4月1日から改正民法が施行されました。
私が扱うことが多い交通事故案件でも影響がありますが,今回は,改正民法の時効の規定についてお話しします。

権利を有している場合であっても,一定の条件のもと一定の時間を経過することにより権利が消滅することがあり,このことを消滅時効といいます。
改正前民法は,不法行為に基づく損害賠償請求権(交通事故における損害賠償請求権などを含みます。)は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年経過すると,中断事由がない限り,時効によって消滅しました。
この点,民法改正によって,人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年経過した場合に時効によって消滅することになりました(民法第724条の2)。
そのため,不法行為に基づく損害賠償請求権のうち人的損害に関しての消滅時効は5年,物的損害に関しては従来と同じく3年ということになります。

なお,令和2年4月1日より前に発生した人の生命又は身体を害する不法行為で,令和2年4月1日の時点で,損害賠償請求権の消滅時効が成立していない場合には,改正民法の規定が適用され,不法行為による損害賠償請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年経過したときに消滅時効が成立します(民法附則第35条)。
たとえば,平成29年3月1日(2017年3月1日)に交通事故に遭った被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った場合には,改正前民法によると,中断事由のない限り,令和2年3月1日(2020年3月1日)に時効が成立するため,改正民法の適用はありません。
これに対して,平成29年5月1日(2017年5月1日)に交通事故に遭った被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った場合には,改正前民法によると,中断事由のない限り,令和2年5月1日(2020年5月1日)に時効が成立するため,令和2年4月1日に消滅時効が成立していないことから,改正民法が適用され,人的損害に関しては,中断事由のない限り,令和4年5月1日(2022年5月1日)に時効が成立することになります。

改正民法の施行によって,様々な影響がありますので,法律問題でお悩みの方は,一度,弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士法人心 千葉法律事務所

弁護士法人心 千葉法律事務所がオープンしました。

弁護士法人心 千葉法律事務所では,交通事故・債務整理・相続など様々な分野のご相談に対応しております。
ご相談の分野に詳しい弁護士が相談を担当いたしますので,ご安心ください。

また,ご相談者様・ご依頼者様にご安心いただくため,お客様相談室がございます。
万が一の場合でも,お客様相談室がありますので,ご安心ください。

弁護士法人心 千葉法律事務所は,千葉駅から徒歩1分程度の場所にあります。
有料相談のお客様・ご契約いただいたお客様には駐車料金のサービスもございますので,電車でお越しいただく方だけでなく,お車でお越しいただく方もお気軽にご相談ください。
また,相談室の除菌な換気など新型コロナウィルス感染防止対策も実施しておりますので,ご安心ください。

当ブログでも,交通事故に関する知識・ノウハウを数多く紹介しているとおり,交通事故に適切に対応するためには,多くの知識・ノウハウが必要になります。
事故後の対応・警察への対応・医師への対応・保険会社への対応・後遺障害・賠償金額など様々です。
そのため,交通事故について弁護士に依頼する場合には,交通事故に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。
交通事故に詳しい弁護士であるかを見極めるポイントとしては,たとえば,保険会社に対する今後の対応,後遺障害に関する対応,などについて質問して適切な回答が返ってくるか否か,などが指標になると思います。
後遺障害分野だけでも,いわゆるむちうち,骨折,靭帯損傷,高次脳機能障害,など様々なものがあり,それぞれに応じて,治療内容に関する注意点,通院時の注意点,後遺障害診断書作成時の注意点,その他書類作成時の注意点,があります。
早い段階で適切な知識を持っておかないと,手遅れになる場合もあります。
千葉周辺で交通事故にお悩みの方は,お気軽に弁護士法人心 千葉法律事務所にご相談ください。
弁護士法人心 千葉法律事務所を詳しくご存知になりたい方は,こちらをご覧ください。

弁護士法人心 四日市法律事務所のオープンについて

弁護士法人心 四日市法律事務所がオープンしました。

弁護士はそれぞれ詳しい分野と詳しくない分野があり,ご相談の分野に詳しくない弁護士に依頼すると,場合によっては,悪い結果になることもあります。
やはり,ご相談の分野に詳しい弁護士に相談した方が安心です。
弁護士法人心 四日市法律事務所では,ご相談いただく分野に詳しい弁護士がご相談を対応いたします。
たとえば,交通事故事故案件であれば,交通事故や後遺障害に詳しい弁護士が相談を対応いたしますので,ご安心ください。

また,後遺障害の有無・程度によって賠償金が100万円単位で変わることも少なくありません。

後遺障害に関しては,医師に対するちょっとした発言や,後遺障害診断書のちょっとした記載の有無で等級の有無や程度が異なっていしまうことがあります。

たとえば,交通事故によるむちうち症で,後遺障害診断書に「雨の日に痛みが生じる」と記載されると,非常時痛であると認定され後遺障害が非該当になってしまうことがあります。

この点,弁護士法人心は,後遺障害を審査する機関である損害保険料率算出機構の元職員が在籍しており,後遺障害等級認定申請のサポート体制は万全です。

交通事故のご相談は,基本的に,無料で承っておりますので,お気軽にご連絡ください。

また,ご相談いただく方・ご依頼いただいた方にご安心いただくため,お客様相談室も設置しております。
万が一,何かあった場合でも,お客様相談室がありますので,ご安心ください。

弁護士法人心 四日市法律事務所は,近鉄四日市駅から徒歩1分程度の場所にあります。
電車でお越しいただく場合であっても,お気軽にお越しいただける場所にございます。

相談室の換気や除菌など新型コロナウィルス感染防止対策も実施しております。

四日市周辺で交通事故にお悩みの方は,お気軽に弁護士法人心 四日市法律事務所にご相談ください。
弁護士法人心 四日市法律事務所を詳しくご存知になりたい方は,よろしければ,こちらをご覧ください。

ルール作り

今回は,私の所属している東京弁護士会・法教育委員会についてお話しします。
先日,法教育委員会の催しで東京の小学校に訪問してきました。
内容としては,4名ないし5名の住民役に分かれて,それぞれの抱える悩みや問題を洗い出し,みんなで議論して,マンションのルールを作るというものです。
主にペットを飼っている住民と飼っていない住民の利害関係の調節がルール作りのポイントでした。
具体的には,①音の問題,②においの問題,③共用スペースの問題がありました。
生徒さんは皆さんとても一生懸命議論して,なんとか1つのルールを作ろうと頑張っていました。
その結果,すべてのクラスでルールが完成し,ルールの中身も素晴らしいものになりました。
とても充実した1日になったと思います。

ところで,法教育委員会が大切にしている考え方として,「正解はない」というものがあります。
私は,この考え方がとても好きです。
小学校の勉強は,一応の正解が決まっている問題ばかりですが,社会に出ると正解のない問題ばかりです。
もちろん,弁護士の仕事も同じです。
正解がないからこそ,常に相手のことを思いやり,「自分を省みる」ことを忘れてはいけないと思います。
小学校でルール作りを教えながら,日々の自分の行動を省みる良い機会にもなりました。
人に教えているはずが教えられることがあるのは,不思議なことだとしみじみ感じた1日でした。

契約書チェック

今回は、契約書チェックについてお話しします。
企業法務案件を扱っていると、契約書のチェックを依頼されることがあります。
契約書のチェックを行う際には、①事業取引の法的性質が何かを考え②契約の要件を充
足しているか確認したうえで③時系列に沿って漏れがないかを確認する手順を踏む場合
が多いです。
そのため、単に契約書を見るだけでは、適切なリーガルチェックになりません。
上記の手順があるため、契約書の内容に不安がある方は、弁護士に相談することをお勧
めします。
もっとも、ご自身で行いたい方もいらっしゃると思うので、以下では、重要な箇所のみ
お話しします。

①事業取引の法的性質
まずは、事業取引の実態に即した法的性質を分析する必要があります。
たとえば、事業取引の性質が、雇用契約であるにもかかわらず、契約書の名称が、「
業務委託契約」となっていることから請負契約だと誤解してしまう場合があります。
しかしながら、法的性質を間違ってしまうと、そもそも関係法令の適用(雇用契約であ
れば、一般的に労働法が適用されます)についても間違ってしまう可能性が高く、その
結果、大きな間違いにつながる可能性があります。
そのため、法的性質をしっかりと把握することが重要です。
②契約の要件を充足しているか確認する
次に、契約の要件(売買契約であれば、⑴売主が目的物の財産権を買主に移転し⑵買主
がこれに対してその代金を支払うことを合意すること)を充足しているか確認すること
が重要です。
通常の契約書であれば、要件を充足していないものは稀ですが、実際には、特定が不十
分なケースも少なくありません。
契約書を読んだだけで、事業取引のイメージができるかを基準にすると良いと思います。
③時系列に沿って漏れがないかを確認する
時系列に沿って、漏れがないかを確認することでトラブルを防止できる良い契約書にな
ります。
その際には、A契約締結時に想定されるトラブル、B契約締結後・履行段階に想定され
るトラブル、C契約終了後に想定されるトラブルに分けて考えると良いです。
もっとも、この作業はかなり専門的知識が必要になります。
ご自身でされる場合には、契約書の書式集を見ながら確認することをお勧めします。
契約書チェックでお悩みの方は是非弁護士法人心東京駅法律事務所にご相談ください。

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。
私事ではありますが、今年の正月は実家に帰省して過ごしました。
昨年も様々な法律相談があり、緊急対応も多かったことを考えれば、正月はしっかりと英気を養う必要があると思っています。
もちろんお墓参りや親戚への挨拶などもありましたので、家の中でゆっくりとはいきませんでしたが、十分な英気が養えたと思います。
実家に帰ると、大量の料理が出てくることから、正月太りの懸念も若干ありますので、まずは運動して、体調管理をしていこうと思っています。

昨年の内定者研修は同席していただけでしたが、今年は、私が内定者研修を2回行います。
内定者研修の内容としては、主に、手帳の書き方、進行表の書き方、記録の管理について行う予定です。
手帳は、自分のスケジュールを把握し、しっかりとした管理を行うことで、依頼されている事件を適切かつ迅速に解決するためのものです。
無理なスケジューリングを防止することは、依頼者のために必須です。
進行表は事件の進行具合を記載するものです。
各依頼者それぞれに作成しており、事件の進行が適切かをチェックするためのものです。
最後に、記録の管理についてですが、時系列順にファイリングすることが大切になります。
時系列が前後逆になってしまうと、一見して分かりづらいので業務効率が落ちることはもちろんですが、場合によっては時系列を間違えてミスにつながるおそれがあります。
そのため、記録の管理については時系列を徹底することが重要です。
このように、とても重要な内容ですから、しっかりとお伝えしようと思います。

本年も様々な内容でブログを更新しますので、ご覧いただければと思います。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

今年を振り返って

今年も様々なことがありました。
交通事故の案件も様々なものがあり、毎回似ているようで全く違う事案だと実感します。
もっとも、その中でも共通したお悩みは一定数ありました。
本年も様々な案件があった中で、相談が多かったのは示談金のチェックと一括対応の打ち切りや一括対応の延長交渉についてだと思います。
示談金については保険会社の提示する金額は自賠責基準に基づいて算出されることが多い一方で、弁護士に依頼すると一般的には弁護士基準(裁判所基準)の提示となるため、弁護士に依頼すると増額することが多いことはブログでもお話ししました。
一括対応の打ち切りについては、被害者請求を用いて、治療費等を回収する方法があることについてブログでもお話ししました。
一括対応の延長交渉については、弁護士に依頼したからといって必ずしも一括対応が延長されるとは限りませんが、症状の経過・事故態様などを適切に主張することで成功する場合もあります。
本年も依頼者が交通事故で悩む点は共通しており、少しでも良いリーガルサービスを提供しようと日々勉強しています。
今後もさらに研鑽を積んで、より良いリーガルサービスを提供しようと思います。
本年もあとわずかとなりましたが、お身体にお気を付けて、良いお年をお過ごしください。
来年も何卒よろしくお願いいたします。

模擬裁判

今回は法教育委員会主催の模擬裁判についてお話しします。
以前ブログでもお話ししましたが、私は東京弁護士会の法教育委員会に所属しています。
法教育とは、法律の専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育です。
法教育委員会では、学生に授業の一環として模擬裁判を行ったりしています。
私が今回参加させていただいたのは専修大学松戸高校と専修大学附属高校の合同(対抗形式)模擬裁判です。
生徒の中から、裁判官役、検察官役、弁護人役を選出し、弁護士が指導担当として適宜フォローしていく形です。
ちなみに私は裁判官役の指導担当として参加しました。
題材としては、被告人が本件窃盗の犯人かが争点となるものでした。
模擬裁判が始まると、それぞれの配役の生徒が準備してきたオリジナルの尋問を行ったり、シナリオにない突然の異議が出るなど、生徒皆さんの熱心な取り組みが印象的でした。
有罪・無罪の判決は、裁判官役と傍聴人役の生徒それぞれが結論を出す形式でした。
結論は裁判官役、傍聴人役ともに無罪となりました。
裁判官役の生徒は様々な可能性を考慮して、結論を出していたと思います。
この点ですが、法を学ぶ上で大切なのは、結論よりも過程だと言われることが多いです。
結論に至る過程で、様々な可能性を議論できたことが良い影響になれば良いなと思いました。
法教育をきっかけに法律に興味を持つ生徒が増えることを祈るばかりです。
とても充実した1日でした。

マイナビインターンシップイベント

先日、東京ビッグサイトで開催されたマイナビインターンシップイベントに参加しました。
主に大学2年生の方がインターンシップに参加する企業を決めるために、熱心にセミナーを聞いていました。
早い時期から就職活動に向けて準備されている熱心な学生の方を見て、自分も頑張らなければと思う一方で、仕事を始めた初心を思い出し、新鮮な気分になりました。
明日からまた頑張ろうと思います。