弁護士法人心 東京法律事務所に所属しております、弁護士の宮城と申します。
日々思ったこと、皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。
私が所属する「弁護士法人心 東京法律事務所」のサイトはこちらです。
交通事故に関する裁判所の管轄について
管轄には、職分管轄、事物管轄、土地管轄などの種類がありますが、今回は、交通事故で訴訟提起する際に、特に考慮すべき、土地管轄についてお話ししたいと思います。
土地管轄とは、地域的区分に従ってどの裁判所が担当するかの問題ですが、どのような根拠でどの裁判所に管轄があるかを交通事故の被害者の目線からお話しします。
1 被告(加害者)の住所を管轄する裁判所
民事訴訟法第4条1項は「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。」と定めており、同条2項では「人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。」と定められていることから、被告の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起ができます。
2 損害賠償請求権を有する者(被害者)の住所を管轄する裁判所
民事訴訟法第5条1号は、「財産権上の訴え」について「義務履行地」を管轄する裁判所に訴訟提起できる旨と定めているところ、民法第484条は「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。」と定めており、交通事故の損害賠償請求においては、債権者の現在の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起することができます。
3 不法行為地(事故の発生場所)を管轄する裁判所
民事訴訟法第5条9号は「不法行為に関する訴え」を「不法行為があった地」を管轄する裁判所に訴訟提起できる旨定めており、不法行為地を管轄する裁判所に訴訟提起ができます。
4 保険会社も共同被告とする場合
「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。」(民事訴訟法第38条前段)一方で、「一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。」(民事訴訟法第7条)と定められており、法人の場合には「主たる事務所又は営業所」(民事訴訟法第4条4項)を管轄する裁判所に訴訟提起できるため、被害者が加害者と保険会社を共同被告とすることにより、保険会社の本店所在地を管轄する裁判所に訴訟提起できます(もっとも、事案の内容等によっては移送される可能性もあります)。
たとえば、訴額が200万円の案件で、①被害者の住所は神奈川県横浜市、②加害者の住所が埼玉県さいたま市、③事故発生場所が千葉県千葉市、④保険会社の本店所在地が東京都千代田区と仮定した場合の管轄は、①横浜地方裁判所、②さいたま地方裁判所、③千葉地方裁判所、④保険会社を共同被告とした場合には東京地方裁判所(移送される可能性もあります)、となります。
このように様々な根拠で様々な裁判所に管轄があることがありますので、訴訟提起をお考えの方は弁護士に相談することをお勧めします。