後遺障害等級認定申請と異議申立

交通事故により受傷した方で、治療を継続したにもかかわらず症状が残存してしまった場合には、後遺障害の認定を受けることを考えられる方も多いです。
そこで、今回は、後遺障害等級認定申請と異議申立についてお話ししたいと思います。

1 後遺障害等級認定申請
後遺障害等級認定申請は、自賠責保険会社に対して必要書類を提出し、後遺障害の審査を求めるものです。
後遺障害等級認定申請には、任意保険会社経由で申請する事前認定の方法と被害者またはその代理人(弁護士等)が直接申請する被害者請求の方法があります。
どちらも必要書類を提出することに変わりはありませんが、必要書類以外も添付すべきか、そうでないか、により結果が変わることもあります。
たとえば、むちうち症の方で、診療録(カルテ)の記載では、一部に「雨の日首が痛い」と書かれたカルテがあった場合に、この一部のカルテだけを抜粋して提出すれば、実際には常時痛であったとしても常時痛ではないと誤解されて、後遺障害が認定されないことがあります。
この場合には、カルテを全体的に見て、常時痛であることが明らかであればすべてのカルテを提出した方が良いですし、そもそもの誤解を与えないためにカルテを提出しない方が良いこともあります。
このように、必要書類以外で提出した方が良いものと提出しない方が良いものとがありますので、いずれにしても後遺障害等級認定申請前には後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
2 異議申立
後遺障害等級認定申請を行ったものの、その結果に不服がある場合には、異議申立を行うことができます。
後遺障害等級認定申請の結果に至った理由を確認したうえで、必要があれば新しい証拠を添付して異議申立を行うことが有効であることもあります。
たとえば、右手首のTFCC損傷で後遺障害等級認定申請を行ったものの、明らかな外傷性の異常所見を認めないとの理由で、後遺障害が認められなかった場合には、主治医に相談したうえで、外傷性の異常所見が分かる画像を出力して指摘してもらい、異議申立を行うことが有効であることもあります。

適切な等級を認定されるためには、後遺障害等級認定申請に関する豊富な知識が必要であることも多いため、後遺障害でお悩みの方は、一人で悩まず、後遺障害に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

証明責任(立証責任)について

交通事故のご相談の中で「相手方が争ってきて、証拠がない場合にはどうなるのですか?」という質問が多くあります。
裁判では証明責任(立証責任)によって判断されることになります。
そこで、今回は、証明責任(立証責任)について、お話ししたいと思います。

証明責任(立証責任)とは、主要事実が真偽不明である場合に、その事実を要件とする自己に有利な法律効果が認められない一方当事者の不利益負担のことです。
基本的には、権利を主張する側が証明責任を負います。
たとえば、金銭の貸し借りの事案であれば、貸した側が貸したことを証明する必要があります。
この場合、証拠との関係では、貸す際には、借用書に一筆もらうなど、証拠を作成する機会があります。
そのため、金銭を貸した事実について、争われ、貸したことについて真偽不明となった場合に、貸した側の請求が認められないことは公平だといえます。
しかしながら、交通事故などの不法行為事案では、事後に証拠が作成されることになるため、どうしても証拠が薄くなる傾向があります。
そのため、しっかりとした証拠が残っていない場合に、真偽不明になることが多くあるため、証拠を残すことがより大切になります。
たとえば、治療経過の証拠として、病院のカルテ(診療録)がありますが、カルテの内容で症状が一貫していることが読み取れない場合には、実際には、症状が一貫している場合であっても、賠償金を減額されてしまうことがあります。
そのため、診察の際の言動には注意が必要で、毎回、医師に症状をしっかりと伝えることが大切です。
また、他覚的所見のない打撲、捻挫などは、骨折事案と比べて、客観的証拠が薄くなる傾向があるため、症状を立証するうえで通院の事実がより重要になりますので、適切な頻度で通院することが大切です。
特に、他覚的所見のない打撲、捻挫の症状の後遺障害等級認定申請においては、後遺障害認定の可否に通院頻度が大きく影響します。
そのため、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。

自動車保険の見直しについて

交通事故案件を取り扱うことが多いですが、その中で、ご自身に合っていない自動車保険の内容になっているケースを目にします(保険料の兼ね合いもあるとは思います)。
交通事故に遭ってから、ご自身の保険の内容を初めて理解する方もいらっしゃいますが、できれば、交通事故に遭う前に保険の見直しなどを行い、ご自身に合った保険に加入できた方が良いと思います。
そこで、今回は、自動車保険の内容についてお話ししたいと思います。

1 対人賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者を傷つけてしまった場合に、そのお怪我に関する損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

2 対物賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者の車両などの物を壊してしまった場合に、その損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

3 人身傷害保険
事故によりご自身が負傷した場合に、ご自身のお怪我に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
人身傷害保険を使用しても、等級には影響しないことが多いため、入っておくことをお勧めします。

4 車両保険
事故によりご自身の車両が壊れた場合に、車両に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
車両が高額な場合には、加入した方が良いですが、車両がそれほど高額でない場合には、車両保険をつけることにより保険料がどのくらい変わるかを確認した上で、加入するか決めることをお勧めします。

5 弁護士費用特約
相手方に自動車事故に関する賠償請求するために弁護士に相談する費用や依頼する費用を補償する保険です。
300万円が上限額となっている保険会社が多いです。
弁護士費用特約は、使える人の範囲が広く、本人、配偶者、同居の親族、未婚の子、対象自動車に同乗していた方、などが使えるとしている保険会社が多いです。
一家に一つ弁護士費用特約があれば十分といえます(保険会社によっては範囲が異なるため注意が必要です)。
弁護士費用特約は、付けることによる保険料の増額はそれほど大きくない一方で、使える人の範囲が広いので、付けることをお勧めします。

上記のほか自動車保険の種類は様々ですので、保険代理店に相談して保険の見直しを行うことをお勧めします。
また、実際、事故に遭われてしまった場合には、ご自身の加入する保険を使用した方が得になることもありますので、交通事故でお悩みの方は弁護士に相談してみるのも一つです。

物的損害の流れについて

交通事故のご相談を受けていると、「被害事故で車が壊れたのですが、今後、どのような流れになりますか?」といったご質問がしばしばございます。
そこで、今回は、物的損害に関する解決までのおおまかな流れをお話ししたいと思います。

まず、全損(修理が不可能、または、修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が高い場合)か、分損(修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が低い場合)か、によって流れが異なってきます。

一見して全損の場合には修理工場に入庫せずに、相手方保険会社と時価額の交渉になることが多いです。
また、一見して全損か分からない場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、そのうえで、修理費と車両の時価額を比較して車両の時価額が低いことが分かれば、全損ということになります。
全損の場合には、時価額+買替諸費用のうち一部の項目について、賠償金を受け取り、解決することが多いです。
もちろん、修理するかは被害者の自由ですので、賠償金を修理費の一部に充てて、修理することもできます。
もっとも、修理費と時価額等の差額が自己負担となってしまうため、修理される方は少ないかもしれません。
なお、全損の場合の時価額について交渉するときに気を付けるべきポイントや買替諸費用のうちどのような項目が賠償金として認められるかは、以前の私のブログでお話ししておりますので、そちらを参考にしていただけますと幸いです。

分損の場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、修理され、修理費が修理工場に支払われて解決することが多いです。
もちろん、修理をせずに、修理費相当額を受け取って解決することも可能です。

以前の私のブログで、代車代について、注意すべきことをお話ししておりますので、そちらも参考にしていただけますと幸いです。

このように、物的損害については、全損か、分損かによって流れが異なってきますので、物的損害でお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

契約書のリーガルチェックについて

弁護士業務のなかで、契約書のチェックをお願いされることがあります。
その際、弁護士の目線から、いくつか大切にしているポイントがあるので、お話ししたいと思います。

まずは、今回の契約の目的(契約によって達成したい物事)を確認しています。
契約書のリーガルチェックでよくあることですが、「相手方から契約書が送られてきたので、リーガルチェックをお願いします」といった内容でお願いされることがありますが、契約の目的によっては、作成するべき契約書の種類が誤っている、もしくは、不適切なことがあります。
たとえば、売買契約書を確認してほしいといった依頼があったとして、その売買契約の目的を聞いてみると、実は、賃貸借契約の方が適していたり、その他の契約が適していることなどがあります。
このように、契約の目的によっては、そもそも、契約書のリーガルチェックまで至らないこともあります。
そのため、まずは、契約の目的を確認するようにしています。

次に、取引内容や事業内容を確認しています。
そもそも、相談者の方と相手方がどのような話し合いを行っていて、どのような内容や条件で契約をしようとしているのかが曖昧なことがあり、この場合には、リーガルチェックまで至らないこともあります。
この場合には、契約の目的から考えて、必要な事項を確認し、場合によっては、再度の話し合いで条件をつめてもらい、その上で作成された契約書をチェックすることもあります。

契約の目的と取引内容が確定している場合には、契約の法的性質を検討します。
売買契約、賃貸借契約、委任契約など様々な契約の種類がありますが、その内どれに当てはまるのか、どの契約に近いのか、などを考えて、法的に重要な事項を確認します。
契約の法的性質を誤ると結論が異なることがあるため、注意して検討します。

最後に、時系列に即してケースを想定して、問題を洗い出します。
大きく分けると、契約前、契約時、契約後から契約終了まで、契約終了後、の順で問題点がないか洗い出していきます。
この段階で、問題がある場合には、相談者の方に伝えた上で相談しすることが多いです。
契約書が相手方作成のものであれば、契約書の修正が容易ではないこともあります。
そのため、契約書の修正を行うか、もしくは、リスクはあるがこのままにするか、もしくは、リスクを減らせる方法がある場合にはその方法をとるかなどを相談して決めていくことが多いです。

このように、契約書のリーガルチェックも、単に、書面上のチェックをすれば足りるものではないことが多いです。
契約書のリーガルチェックは、契約書の作成やチェックに精通した弁護士に相談や依頼することをお勧めします。

後遺障害等級認定申請の認定機関について

今回は、後遺障害等級認定申請の認定機関についてお話しします。
治療を継続したものの症状が残ってしまった場合には、後遺障害認定のために、後遺障害等級認定申請を行う被害者もいらっしゃいます。
この後遺障害等級認定申請の認定機関は、形式的には、相手方の自賠責保険会社になりますが、実質的には、損害保険料率算出機構になります。
後遺障害等級認定は必要書類を自賠責保険会社に提出しますが、自賠責保険会社は、その必要書類を損害保険料率算出機構に送付し、実際に、調査や審査を行うのは損害保険料率算出機構になります。
損害保険料率算出機構の調査が完了した後、損害保険料率算出機構から自賠責保険会社に調査結果が送付され、その調査結果に基づいて、自賠責保険会社で後遺障害等級認定申請の回答が出されるという流れになります。

後遺障害の認定基準について、細かい基準や実際の運用は外部に非公開の情報になります。
また、担当者や後遺障害の申請時期などによっても若干の差が出るとも言われています。
そのため、後遺障害は申請してみないと、認定されるかは分からないものになります。
一方で、後遺障害診断書や経過の診断書、カルテなどに明らかに不利な記載がある場合には、後遺障害が認定されない可能性が高いと分かるケースもあります。
いずれにしても、後遺障害でお悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

後遺障害等級認定申請は、任意保険会社経由で申請する方法(事前認定)と被害者またはその代理人が、直接、自賠責保険会社に申請する方法(被害者請求)があります。
事前認定の場合には、提出した方が有利な書類が添付されていなかったり、提出することで不利になる書類が添付されて申請されることがあります。
そのため、基本的には、後遺障害等級認定申請は被害者請求で行うことをお勧めします。

後遺障害については、気を付けるべきことが多くありますので、お悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

示談金額無料チェックサービスについて

交通事故案件を多く対応させていただいておりますが、この中で、示談金に関するご相談も多くあります。
そこで、今回は、弁護士法人心で行っている示談金額無料チェックサービスについてお話ししたいと思います。
示談金額無料チェックサービスは、交通事故の被害者の方が保険会社から示談金(賠償金)の提示があった場合に、弁護士が無料で示談金額が適正であるかを無料でチェックするサービスになります。
保険会社は、相場より低い金額で示談金を提示することも多くあります。
たとえば、慰謝料の金額が弁護士基準ではなく、自賠責基準や任意保険基準で提案されていることや、主婦の休業損害賠償について日額が約1万円ではなく6100円で提案されている場合には、相場より低い金額である可能性がありますので、要注意です。
また、後遺障害が認定された場合に、たとえば、14級の自賠責保険金である75万円を後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額としている事案は、相場より低い金額である可能性が高いため、要注意です。
その他、実際生じている交通費が計上されていない事例や、実際に生じている休業損害が計上されていないこともあります。
私の経験でも、休業損害が計上されていない事案や相場の半分以下の金額で提示されていた事案もありました。
こういった事案のご相談があると、弁護士としても、相談していただいて良かったと思うことがあります。
もちろん、その中には、実際にご依頼いただいて解決した事案も多くあります。

示談書の取り交わし後では、基本的には、示談金額を争うことができなくなるので、示談前に相談することが大切です。
本当に提示されている金額が妥当なのだろうか?と考える一方で、弁護士に相談するとお金がかかってしまうのでは?と考えて、相談をためらう方もいらっしゃると思います。
示談金額無料チェックサービスでは、無料で示談金額のチェックを行っており、相談料は無料ですので、安心です。
示談金額でお悩みの方は、お気軽に弁護士法人心にご相談ください。

物的損害に関する注意点

今回は交通事故案件における物的損害に関する注意点についてお話しします。

まずは、代車料についてですが、交通事故により車両が損傷した場合に、修理ないし買い替えするための期間、代車を借りることがあると思います。
この代車料については、事案の内容によっても異なってきますが、全損(修理費と車両の時価を比べて修理費が高い場合や修理ができない場合)であれば、30日程度、分損(修理費と車両の時価を比べて車両の時価額が高い場合)であれば2週間程度とされることが裁判例でも多いです。
全損の事案では、手元に購入資金がない方も多く、物的損害に関して示談してから、その示談金を元手にして新車を購入する方もいらっしゃいます。
もっとも、事故後から代車を借りていると、新車の納車日まで保険会社が対応する代車期間が過ぎてしまうことがあります。
そのため、できる限り早めに新車の購入手続きを進めていくことが大切です。
被害者の場合には、まずは、相手方の保険会社との交渉で、できる限り代車を対応してもらうことはもちろんですが、場合によっては、ご自身が加入している代車特約を使用することなども検討する必要があります。

また、分損事案で、過失割合が争点になる事案では、修理を進めたものの、過失割合に争いがあるため、示談できないことから、修理費を立替払いする必要が生じることがあります。
過失割合が生じる場合に、修理費の立替払を行う資金があるか、車両保険に加入している方は車両保険を使った場合の保険料の上がり幅がどの程度か、などを事前に調べておくと良いと思います。

その他、全損の事案で、買替諸費用の一部(同年式、同車種の中古車を買い替えた場合の費用の一部)が賠償金として認められることがあります。
そのため、新車を購入した注文書や同年式、同車種の中古車の買い替えの見積書の写しなどを保険会社に提出することにより、買替諸費用の一部が支払われることがあります。
保険会社によっては買替諸費用を計上せずに示談金を提案してくることがありますので、注意が必要です。

このように、物的損害については注意点がいくつもありますので、物的損害にお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみるのも一つだと思います。

自損事故で負傷した場合の対応方法

今回は、自損事故で負傷した場合の対応方法についてお話しします。
自損事故で負傷した場合には、自己負担で治療費の支払いをせざるを得ないと考える方が多いです。
しかしながら、人身傷害補償保険や自損事故対応の保険を使用して、治療費が支払われることがあります。
その際、自動車に乗ってる時の自損事故であれば、その自動車に付帯されている保険を確認することはもちろんですが、ご家族の方が加入している自動車保険が使えるケースもありますので、ご家族の保険まで確認することをお勧めします。
なお、人身傷害補償保険が使える場合には、治療費だけでなく慰謝料なども支払われることが一般的ですので、確認することをお勧めします。

また、自動車保険等が使えない場合であっても、通勤中や業務中の事故の場合には、労災保険が使える場合があります。
労災保険が使用できる場合には、治療費や休業補償の一部が支払われることがあります。
たとえば、労災保険が使える自損事故により休業した場合には、労災の休業補償として平均賃金の60%を給付日額として支払われることがあります。
さらに、上記休業補償とは別枠で、平均賃金の20%を給付日額として休業日に応じて休業特別支給金が支払われることがあります。

労災保険の休業補償給付と合わせて特別支給金の申請をした方が、全体で、日額の80%を補償されることになりますので、是非、ご活用ください。

人身傷害保険を使用して休業補償として10割受け取り、かつ、労災の特別支給金で20%受け取ることも可能ですので、特別支給金の申請は忘れずに行っておきたいところです。
なお、労災保険からは慰謝料は支払われません。

自動車保険も使用できず、労災保険も使用できない場合には健康保険を使用して通院する形になりますが、上記のとおり、自損事故の場合であっても、自動車保険が使えることがあり、労災保険が使えることもありますので、自損事故を起こした場合には、ご自身の保険はもとよりご家族の保険、労災保険が使えるかなどを確認することをお勧めします。

裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?

法律相談を行っていると、よく、「裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?」との質問を受けることがあります。
もちろん、裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼することは可能です。

弁護士に依頼すると裁判になるというイメージが強いかもしれませんが、実際、弁護士の業務は幅広く、裁判だけでなく、示談交渉、契約書のリーガルチェックなど様々です。
そのため、弁護士に依頼するときに、受任範囲(委任範囲)を示談交渉に絞って依頼すれば、安心です。

私が多く扱っている交通事故分野においては、実は、示談交渉で解決するケースがほとんどです。
保険会社も被害者の方も早期に解決したいという意向が同じであることが多く、示談で解決することが多いのが実態です。
もちろん、保険会社が適切な賠償金を提示しないために、裁判になるケースもありますが、あくまで依頼者の方が望んだ場合に、訴訟(裁判)を提起する形になります。

交通事故案件で弁護士に依頼すると、法的なアドバイスを受けられることはもちろんですが、交渉を任せることができるため心理的負担の軽減につながることが多く、治療に専念しやすくなることがあります。
そのようなメリットに魅力を感じる一方で、「弁護士に依頼すると裁判になってしまうのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、依頼するかはともかく、一度、詳しい弁護士に相談してみるのが良いと思います。
特に、交通事故分野では、弁護士が入っていないケースの場合、低額な賠償金が提示され、そのまま示談してしまうことも少なくありません。
保険会社は交通事故の対応経験が豊富である一方で、被害者の方は、事故の経験が少なく、場合によっては初めて事故に遭われた方も多いらっしゃいます。
そのような中で、ご自身の判断で示談してしまい、後で、適切な賠償金よりも低額であったことを知った時に後悔してしまう方もいらっしゃいます。
依頼するかは相談後に決めれば良いことなので、後悔しないためにも、詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

減収がない場合の後遺障害逸失利益の算定について

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が認定された場合に、後遺障害がなかったのであれば得られたであろう収入等の利益をいいます。
減収がない場合には、基本的には後遺障害逸失利益が認められないため、この点についてお話ししたいと思います。

後遺障害逸失利益の計算方法は、一時金賠償の場合、一般的には、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数、により算出します。
たとえば、令和2年4月1日以降の事故、事故前年度の年収が700万円のサラリーマンの男性で、後遺障害等級第8級が認定された場合、症状固定時の年齢が42歳であれば、一般的には、700万円×45%(後遺障害等級第8級相当の労働能力喪失率)×17.4131(67歳までの労働能力喪失期間25年に対応するライプニッツ係数)=5485万1265円となります(事案の内容や証拠の内容によっても異なります)。

もっとも、後遺障害が認定された事例で、減収が無い場合には注意が必要です。
最高裁判所の判決(最判昭和56年12月22日)で、減収がない事案において、「特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はない」と判断しており、この「特段の事情」について、「たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべき」としています。
このように、裁判所の判断では、減収がない場合には、基本的には、後遺障害逸失利益が認定されないことになります。

後遺障害逸失利益に関しては、様々な裁判例がありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士の選び方について

日々の業務の中で、交通事故と企業法務を取り扱うことが多いのですが、依頼者や相談者の方から、「弁護士を選ぶときに気を付けるべきことはありますか?」と質問されることがあります。
一般の方からすると、弁護士は馴染みが少なく、知り合いにいることも多くないため、悩まれる方も多いと実感しています。
そこで、今回は、弁護士を選ぶときの注意点についてお話しします。

1 相談する分野の知識や経験が豊富な弁護士に相談、依頼すべき
弁護士にも、知識や経験に偏りがあることが多いです。
交通事故を多く扱う弁護士もいれば、相続を多く扱う弁護士もいれば、債務整理を多く扱う弁護士もいれば、企業法務を多く扱う弁護士もいます。
ご自身の相談、依頼する分野の知識や経験が豊富な弁護士に相談、依頼する方が良い結果につながりやすいと思いますので、相談を担当する弁護士がご自身と類似した事案をどの程度経験したことがあるかを確認することをお勧めします。
2 話しやすさ
弁護士は法律の専門家ではありますが、実際の案件を適切に解決するためには、事実をご存知の依頼者や関係者から事実をお伺いする必要が生じます。
事実が異なれば結論が変わることは多々あるため、事実の確認はとても大切です。
一方で、弁護士が話しにくい雰囲気の場合には、依頼する側からして、事実を伝えづらくなり、場合によっては、大切な事実が伝わらない結果、結論が変わってしまうこともあります。
話しやすい弁護士に相談、依頼することをお勧めします。

このほかにも弁護士の選び方として気を付けるべきことは様々ありますが、分野によって確認すべきことが異なることがあります。

たとえば、交通事故であれば、交通事故案件の対応件数はもとより、自賠責保険の後遺障害等級認定申請についての対応件数、異議申し立ての対応件数などを確認すると分かりやすいかもしれません。

法律問題でお困りの方はお気軽に弁護士法人心東京法律事務所にご相談ください。

異時共同不法行為について

交通事故に遭ってお怪我をされた方が、治療中に、再度、交通事故に遭い、お怪我をされ、前の事故で負傷した箇所が悪化した場合、異時共同不法行為として特殊な対応が必要な場合があります。
そこで、今回は、異時共同不法行為についてお話しします。

異時共同不法行為については、共同不法行為(民法第719条1項後段)として処理する考え方と共同不法行為ではなく、別々の事故としてそれぞれを処理する考え方があります。
共同不法行為として処理する考え方の場合には、1つ目の事故の加害者と2つ目の事故の加害者が、原則として、連帯して被害者に生じた損害の全額を支払う義務があります。
被害者にとって有利な考え方といえます。
一方、別々の事故で処理する考え方の場合には、それぞれの事故の損害等を個別に証明しなければならず、被害者にとって、それほど有利な考え方とはいえません。
裁判例も共同不法行為として判断した事案(東京地判平成21年2月5日)と共同不法行為ではないと判断した事案(名古屋地判平成26年6月27日)があります。

事案の内容等によっても判断が異なると考えられるため、共同不法行為として処理されない場合に備えて準備しておくことが大切です。

具体的には、2つ目の事故の賠償との関係で、1つ目の事故の影響を考慮して、賠償金を計算される可能性があるため、2つ目の事故の治療継続中には、1つ目の事故の示談は行わず、2つ目の事故の賠償金の交渉を進めてから、1つ目の事故の示談を進めた方が無難です。
また、自賠責保険との関係で、1つ目の事故について、示談が成立していると、仮に、症状が残存した場合であっても、1つ目の事故の影響は考慮されない可能性があります。
そのため、1つ目の事故の示談は、より慎重に進める必要があります。
このように、異時共同不法行為は、気を付けるべき点がありますので、異時共同不法行為でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

車両の写真の重要性

交通事故においては車両の写真が非常に重要な証拠になることがあります。
車両が壊れていることの証明に役立つことはもちろんですが、傷の具合からどの程度の衝撃があったかを把握するためにも有益である一方、損傷具合から車両が停止していたかが分かる場合もあります。
すなわち、物的損害の損害額の証明のためだけでなく、人的損害(お怪我に関する損害)や過失割合に関する重要な証拠になることがあります。
交通事故は、突然、起こってしまうため、車両の写真を撮ることに思い至らない方が多いとは思いますが、できる限り、車両の写真を撮っていただくことが望ましいです。
交通事故に遭わないことが一番ですが、万が一、交通事故に遭われた際は、車両の写真をお撮りいただくことをお勧めします。
また、交通事故にお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故案件におけるカルテの重要性について

今回は、交通事故案件におけるカルテの重要性についてお話しします。

交通事故案件で、訴訟(裁判)になると、基本的には、通院した各医療機関等にカルテ(診療録)を開示するための文書送付嘱託がされます。
裁判では、カルテの記載内容から、症状の出現時期、一貫性、症状の程度、他覚的所見の有無、症状固定時期、など様々な要素を把握します。
医学に関係する物事で、カルテに記載のないことは、基本的には、無いものとして扱われてしまうことが多いです。
そのため、カルテの記載内容は、裁判において重要です。

医師の前で話したことがカルテに記載されることがありますが、診察を受けるときには、患者に有利な事実がカルテに必ず記載されるとは限らないことに注意した方が良いです。
有利な事実であれば、しっかり伝えてカルテに記載してもらうようにすることを意識すると良いと思います。

過失割合が生じる事故と車両保険について

今回は、よくご相談のある過失割合が生じる事故と車両保険についてお話ししたいと思います。
車両保険は、ご自身の車両が損傷した場合に、その修理費等に相当する金額を支払う保険です。
全損の場合(車両の修理が不可能な場合や車両の時価額より修理費が低額である場合)には、車両の時価額相当の金額が支払われることが多いです(新車特約などが使える場合には異なります)。

この車両保険は、特に、過失割合が生じる事故の場合に、活用した方が良い事案が多くあります。
たとえば、過失割合が3対7、車両が全損の評価を受け、時価額が100万円の事案の場合には、①車両保険によって100万円得られる可能性がある一方で、②相手方からの賠償金は70万円(100万円×0.7)になる可能性があります。
仮に車両保険を使用することで、保険料が15万円上がるとすると(保険会社とその保険契約の内容によって保険料の上がり幅は異なります)、車両保険で受け取れる金額100万円-保険料上昇による支出15万円=85万円>相手方からの賠償金は70万円、となるため、車両保険を使った方が15万円得することになります。

このように、過失割合等によっては、被害事故の場合であっても車両保険を活用した方が良い事案もあります。
過失割合や車両保険の活用についてお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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後遺障害等級認定申請と異議申立

交通事故により負傷された方で後遺障害等級認定申請を行ったものの、後遺障害が認められなかった場合に、異議申立を考える方がいらっしゃいます。

交通事故案件を集中的に取り扱っているとしばしば異議申立に関するご相談がございます。

そこで、今回は、異議申立の注意点についてお話しします。

交通事故によりいわゆるむち打ち症になった方の場合には、治療状況等を勘案したうえで将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことを理由に後遺障害が認められないことがあります。
この場合には、様々な方法が考えられますが、一つの方法として、症状固定から一定期間経過後も治療を続けたが症状が残っていることなどを診断書などに記載してもらい、異議申立を行うことが考えられます。
治療のためにも、主治医に上記診断書等の作成を協力してもらうためにも、症状固定後も定期的に通院することが大切です。

また、骨折等による可動域制限が残存した場合において、画像上の異常所見が明らかではないとして、後遺障害が認定されないものがあります。
この場合には、主治医に画像上の異常所見を示してもらい、書面化したうえで、異議申立を行うことが考えられます。

異議申立の結果に大きく関わるものとして、初回の後遺障害等級認定申請において提出した書類の内容があります。
たとえば、初回の後遺障害等級認定申請でカルテ等を提出しており、そのカルテの記載内容として、度々、「症状改善」、「症状軽減」などの症状が改善する傾向が記載されている場合には、異議申立を行ったとしても、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えがたいと判断される可能性が高いです。
初回の後遺障害等級認定申請において提出した書類の内容が最終的な結果に大きく関わることがあるため、事故当初の段階から主治医に適切な症状を伝えること、後遺障害申請前に提出書類の内容をチェックすることなどが大切です。
そのため、できる限り早い段階から交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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母校の座談会

先日、母校である多摩大学目黒高校の座談会に参加させていただきました。
講壇で、学生時代に意識していたこと、工夫していたこと、後悔したこと、など、様々な質問に回答しました。
個別の質問では、学生時代の勉強や頑張っていたことで今の弁護士の仕事に活きていること、進路に悩んでいるがどうしたら良いか、などの質問にも回答しました。

学生時代を振り返ると、上手くいったこともあれば、上手くいかなかったことも多くあったと思います。
上手くいかなかったことが、今に活きていることもあり、何が学生にとって良いことなのか悩みながら回答した座談会でした。
その中でも、母校の生徒に伝えたかったのは、学生もいつかは社会人として独り立ちすることになるということです。
当たり前かもしれませんが、自分の人生は自分で決めていくことを意識してほしいと伝えました。
今やりたいことが決まっていなくても、将来やりたいことが決まったときに後悔しない学生生活を送ってほしいという思いと、今やりたいことが決まっていないのであれば、
新たな物事に触れたり、今取り組んでいることを一生懸命継続していくことで、自分の好きなものや自分が一生をかけてやりたい仕事が見つかる可能性があることを伝えました。

私は中学生のときに弁護士になりたいと思い、ずっと弁護士になるために勉強をしていましたが、その当時に想像していた弁護士と実際の弁護士の仕事は違う点が多いと感じます。
その当時想像していたよりも大変でプレッシャーも大きいですが、その反面、依頼者の方の笑顔、安心した表情を見れること、喜んだ声、安心した声を聞けることに、これほど喜びを感じられる仕事だと思いませんでした。
母校の生徒の中には、私と同じような経験をしていくことがあるかもしれませんが、どのような仕事するにしても、「この仕事をしていて良かった」と思える人生を送ってほしいなと願うばかりです。
座談会を通じて、私が在学していた当時よりずっと学生のレベルが上がっていて驚きましたが、一方で、進路に悩む生徒が比較的多い印象を抱きました。
少しでも私の回答が悩んでいる母校の生徒のためになれば良いなと思います。

証拠上受傷態様が軽微であると評価される事故についての注意点

証拠上、受傷態様が軽微であると評価される事故について注意すべき点がありますので、今回は、このことについてお話します。

受傷態様が軽微と評価される事故は様々ですが、たとえば、クリープ現象による追突、ミラー同士のみの接触、二輪車において転倒していない事故、物損が軽微である事故、などがあります。

このような受傷態様が軽微と評価される事故は、実際に負傷しているにもかかわらず、自賠責保険による支払いが受けられない場合があります。
そのため、自賠責保険に対する被害者請求をするのか、それとも、任意保険からの一括対応で支払いを受けるのか、の判断が極めて重要になります。

たとえば、受傷態様が軽微と評価される事案において、自賠責保険による支払いがおおよそ受けられそうにない場合には、被害者請求をしてしまうと、事故と受傷との相当因果関係が否定され、治療費や慰謝料が支払われないことがあるので、注意が必要です。
このような事案の場合には、任意保険会社から一括対応による支払いを受けるか、もしくは、人身傷害特約を使える方は人身傷害特約によって支払いを受ける方が有利になる場合があります。

もっとも、人身傷害特約を使用する際に、事前に、任意保険会社から、自賠責保険の支払いを受けられるかの調査がされることもあります。
この調査結果によっては人身傷害特約からの支払いを受けられないことがあります。
そのため、このような場合には、人身傷害特約を使うよりも、直接、自賠責保険会社に請求する被害者請求の方が、自賠責保険からの支払いが受けやすいことがあります。

また、相手方の任意保険会社が調査した結果、受傷態様が軽微であるとして、自賠責保険からの支払いが受けられなかった場合には、人身傷害特約による支払いも受けられなくなることがありますので、この点も注意が必要です。

この場合にも被害者請求の方が自賠責保険からの支払いが受けやすいことがあります。

このように、証拠上、受傷態様が軽微であると評価される事故については様々な注意点があります。
交通事故でお悩みの方は、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

対物超過特約

交通事故で車両が被害に遭った場合に、相手方の加入する任意保険があれば、対物賠償保険によって支払われることが多いです。

もっとも、相手方の任意保険に、対物賠償保険だけでなく、対物超過特約が付帯されていれば、対物賠償保険を超える部分が、対物超過特約で定める範囲で、支払われることがあります。

そこで、今回は対物超過特約についてお話しします。

 

現在の裁判例は、車両に関する物的損害の賠償について、修理費または車両の時価額のうちいずれか低い金額を賠償すれば足りるとする傾向があります。

たとえば、被害者に過失のない追突の事故で、車両の修理費が50万円、時価額が30万円であれば、時価額30万円を賠償すれば足りることになります(厳密には買替諸費用、代車料、レッカー代なども上乗せされる可能性がありますが、ここでは分かりやすくするためにこのように記載しています)。

そうすると、修理した場合には差額の20万円(修理費50万円-時価額30万円)が自己負担という結果になります。

もっとも、相手方の任意保険に、対物超過特約が付帯されていれば、対物超過特約で定める範囲(たとえば、時価額から50万円の範囲など)で、時価額を超える金額が支払われることがあります。

たとえば、50万円を上限とする対物超過特約を付帯していた場合には、先程の事例の場合、対物保険から時価額30万円が支払われ、修理費との差額の20万円が対物超過特約によって支払われることがあります。

なお、過失割合が生じる事故の場合には、相手方に請求できる過失割合分に限定されるのでご注意ください。

このように、対物超過特約によって、対物賠償では支払われない部分が支払われることがありますので、相手方の保険に対物超過特約が付帯されているか確認することはとても大切です。

物的損害については、様々な知識が必要になることも多いため、物的損害でお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。